第231話 討ち入りでござる!
『
『コンペイトウ、全部落とせ~!』
ユアとユナが霊気機関車"U3号"を護って戦いながら大騒ぎをやっている。
それもそのはず、U3号の下方から大量の龍人が出現して襲って来ているのだ。混戦状態で正確な数は数えられないが、ざっと500体は超えているだろう。おまけに、リールが相手をしている異界神の使徒が、蛾のような魔王種の大群を引き連れて来ていた。
龍人が緑鱗ばかりで、小柄な幼体であることが幸いだった。銃器による攻撃が有効で、何発か当たれば飛行能力を失って墜落していく。無論、落ちたくらいで死ぬわけではなく、しばらくすると再生して飛び上がって来るのだが・・。
『ロッシ、弾幕薄いよっ!』
『もっと、じゃんじゃん撃つべしっ!』
黒い水玉柄のルドラ・ナイトが忙しく移動しながら、MP5SDから銃弾をばら撒いている。
もっとも、ロシータの碧頭のルドラ・ナイトが抱え持っているM240は、ユアとユナのそれとは比べものにならないほどに高威力で弾速が速い。龍人を空中から叩き落としているのは、ほとんどがロシータ機の銃撃によるものだった。
『リール! 蛾を近寄らせちゃダメ!』
『アオッチ、タッチ! まだ使徒を落とせない?』
ユアとユナのルドラ・ナイトが棍棒を振り回して、霊気機関車"U3号"に取り付いた龍人を殴り飛ばす。 その上空で、アオイとタチヒコのルドラ・ナイトが細身の使徒と空中で斬り結んでいた。使徒は、黒翼を生やした甲冑姿の巨人である。鏡面の楯を片手に、光弾を放つ長い銃を抱え持っていた。
使徒の方が空中戦に慣れているらしく、二対一でも捉えきれていない。使徒は、アオイ達の剣や銃による攻撃を躱しつつ、光弾を放って"U3号"を狙い撃ってくる。
『そこぉっ!』
『やらせはせんぞ!』
ユアとユナが、ぎゃーぎゃー騒ぎながら多重の魔法防壁を出現させて光弾を受け止めている。
"U3号"の防壁だけでは貫通され、着弾を許してしまう。使徒の光弾は、ユアとユナが魔法防壁を重ねて生み出した光壁で何とか防げるほどの高威力だった。
龍人の炎弾が"U3号"の底部を襲って灼いていたが、一発や二発では"U3号"の魔法防壁は破れない。
『車両の下に回るわ!』
ユアとユナを支援しながら魔王種の巨大蛾を撃っていたミリアムのルドラ・ナイトが、頭を下に降下する。
『アレクだ! 金ピカ、仕留めたぜぇ!』
龍人に埋め尽くされたような地表で暴れ狂っていたルドラ・ナイトが金鱗の龍人を吊るし持って凱歌をあげた。
『ピノンをあげる!』
『クロクマもつけちゃう!』
ユアとユナが歓声をあげる。
『ついでに、EXいっとくぜぇーーっ!』
アレクのルドラ・ナイトが、片手に金鱗の龍人の死骸を握ったまま、咆吼をあげるように両腕を空へ突き上げるなり、渾身の力を込めて地面めがけて叩きつけた。
直後、重々しい衝撃音が地表に爆ぜ、アレクのルドラ・ナイトを中心にして紅蓮の炎が吹き荒れて拡がって行く。緑鱗の幼体が次々に炎に包まれ、苦鳴をあげて転がり回る。
『おらっ、おらっ、おらっ、おあぁぁぁーーーっ!』
アレクのルドラ・ナイトが猛った声を放ちながら、立て続けに地面を殴りつけた。
その度に、業火の渦が生まれて周囲一帯を灼き払っていく。
『死んどけや、クソ共がぁぁぁーーーーっ!』
最後に、高々と飛び上がると、拳に炎を纏わせて地面に打ち込んだ。
途端、地表の彼方此方を突き破って、炎の柱が乱立し、紅蓮の炎竜となって大地を灼いた。
『うははは・・圧倒的ではないかぁ!』
『何という、高火力っ!』
ユアとユナが大はしゃぎで叫ぶ。
その時、ドシッ・・と鈍い音が鳴って、"U3号"に連結された格納車に使徒の光弾が命中し、防壁を黒く灼いた。貫通まではしていないが外壁表面は溶けて抉れている。
『・・やったね?』
『・・やっちゃったね?』
黒い水玉柄のルドラ・ナイトが黄金色の神聖光を纏いながら使徒を見上げた。
『大空の支配者が誰なのか・・』
『その頭に刻んでやろう!』
低い呟きと共に、ルドラ・ナイトが車両の天井から掻き消えた。
アオイとタチヒコのルドラ・ナイトの攻撃が少しずつ当たり始め、黒翼の巨人が"U3号"を狙う余裕を失いつつあった。そこへ、黒い水玉柄をしたルドラ・ナイトが乱入した。
ボゴォッ・・
鈍い殴打音と共に、巨人の頭部が左右から挟み込むようにして黒い棍棒で殴られた。
ひしゃげた兜の中がどうなったのか・・。
追撃を加えようとしたアオイ機とタチヒコ機が思わず動きを止め、使徒の巨人を見つめた。
直後、
『セイクリッドォォーーーー・・』
『ハウッリングゥゥーーーー・・』
両拳を握ったルドラ・ナイトが白銀の閃光を噴射した。
バシュゥゥゥゥーー・・
至近距離から直撃を浴びた巨人の腰から上が消し飛び、大きな白い魂石が出現する。それを、アオイのルドラ・ナイトが受け止めた。
『アオッチ、収納よろしく』
『我らに収納余力なし』
白い魂石をアオイのルドラ・ナイトに押しつけた。
ヴィィー・・ヴィィー・・ヴィィー・・
全魔王種に告げる!
忌々しい悪魔"リール"によって"白蛾の王"が殺された!
戦いに備えよ!
防備を怠るな!
仇敵は強大なり!
脆弱な人や獣を喰って満足するな!
全ての魔王種よ、さらなる高みを目指せ!
ヴィィー・・ヴィィー・・ヴィィー・・
『さすがリール君だな!』
『クロクマ級の活躍であるぞ!』
ユアとユナが褒め称える。
『
笑いを含んだリールの声が通話器に届いた。
『甘味も良いが・・厄介そうなのが、もう一体、近付いて来ておるぞ』
『今度は何?』
『また新手?』
『白い甲冑人形じゃ』
『・・来たね!』
『・・出たね!』
『まだ距離はあるが・・似たようなのが50・・52体じゃな』
リールが数えながら言った。
『ユッキ?』
『ボスは?』
『龍人と斬り合いながら移動。すでに北の海上に出ています』
ユキシラから通話が入った。
手強い龍人と戦いながら少しずつ場所を移しているのだ。山岳地を抜けて、すでに海の上に出ているらしい。
『異界の人形がいっぱい来た!』
『こっちを狙撃できる距離まで戻って来て!』
『承知しました』
『ミリアム師は"U3号"を護って!』
『リールも"U3号"を死守!』
ユアとユナが指示を出す。
『分かったわ!』
『承知じゃ』
『この世界は、我らのものである!』
『許可無く侵入した馬鹿者共を叩き潰す!』
『おうっ!』
『はい』
『やりましょう』
『お任せを』
それぞれが決意の籠もった返事を返した。
『それでは
『討ち入りでござる!』
掛け声とともに、黒い水玉柄のルドラ・ナイトが神聖光を噴き上げた。
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