第220話 惨禍
空気はある。毒素を少し感じる。HP、MP、SP数値に変化をもたらすほどの毒素では無いらしい。
カーミュが灼いて拡げた空間を抜けるなり、手早く自分の体を調べてから、シュンはアルマドラ・ナイトを召喚して合身した。
全高は15メートル。手に抱え持つVSSも、アルマドラ・ナイトに合わせて大型化している。
ほぼ正面に浮いていた大きな"壺"めがけてVSSを連射した。威力が足りないようなら、"
そのまま、連射を続けていると、"壺"の内側から連続した小爆発が起こり、黒煙を上げながら地表に向かって墜落を始めた。
"壺"には、どうやら銃が効く。単純に撃って破壊すれば良いらしい。
「"壺"を破壊した」
試しに、ユアとユナに話し掛けてみる。
『呼吸できる?』
『太陽ある?』
ユアとユナから質問が飛んでくる。どうやら、"護耳の神珠"が使える空間らしい。
「少し毒素はあるが気になるほどでは無い。太陽は・・紫がかった物が2つ見える」
質問に答えながら、"
近距離に浮いているように見えていたが・・。
「大きいな」
"
VSSを収納して、代わりに"
ヒュイィィィィィィィィーーーーー・・・・
"
"
アルマドラ・ナイトが"
黄金光の奔流が一直線に伸びて巨大な"
前方では、巨大"
ヒュイィィィィィィィィーーーーー・・・・
再び、"
狙われている"
アルマドラ・ナイトが"
"
黄金光に貫かれ、灼熱に溶解し、蒸発して消える。
紫光を放つ太陽の下で、何万という数の爆発が連鎖し、吹き荒れる熱風が大気から水分を消し去り、岩を蒸発させる熱風が地表を荒れ狂って、生きとし生けるものを死滅させていく。
ヒュイィィィィィィィィーーーーー・・・・
"
7つあった巨大"
「カーミュ、魂は?」
『
「人では無いのか?」
『頭だけなのです』
「頭? 脳か?」
『頭だけがいっぱい詰まっているです』
"
「それが、ここの人の形か」
『何億と集まっているです。気持ち悪いのです』
シュンが生きている世界では、王都と呼ばれるような都市でも、せいぜい1万人が暮らす程度だ。億の単位で"人"が集まっていると言われても想像がつかない。
ヒュイィィィィィィィィーーーーー・・・・
アルマドラ・ナイトは、高鳴る"
瞬間、何かが正面に飛び込んで来た。
迸る黄金光が遮られて四方へ飛び散り、逃走を図る"
ヒュイィィィィィィィィーーーーー・・・・
アルマドラ・ナイトが委細構わず、"
その行く手に、大楯と曲剣を握った龍人が飛び込んで来た。身の丈が20メートル近い、白銀の鱗をした龍人の成体だった。
先ほど、黄金光を浴びていながら、巨躯を覆う鱗にも、手にした武具にも傷1つついていない。
突進するアルマドラ・ナイトを迎えて、白銀龍人が楯を前に曲剣を引いて身構える。
巨躯と巨躯。
互いに激しい衝突が予想されたが・・。
ぶつかり合う寸前、アルマドラ・ナイトの姿が消えていた。
直後、白銀龍人の背後で閃光が輝いた。
瞬間移動で龍人の後ろへ抜けたアルマドラ・ナイトが最後の"
逃走中の"
ヒュイィィィィィィィィーーーーー・・・・
アルマドラ・ナイトが、"
グルアァァァァァーーーー・・
白銀鱗の龍人が激しい咆吼をあげて、アルマドラ・ナイトを追った。
しかし、
シュアァァァーーーー・・
大気を灼きながら黄金の殺戮光が放たれ、落下中の"
ヒュイィィィィィィィィーーーーー・・・・
ガアアァァァァーーーー・・
白銀鱗の龍人がさせじと立ち塞がるが、アルマドラ・ナイトが連続して瞬間移動を繰り返して、残る残骸めがけて黄金光を放つ。
カアァァァァァーーーー・・
怒り狂った白銀鱗の龍人が、口腔から白銀の光を放ってアルマドラ・ナイトへ浴びせた。
ヒュイィィィィィィィィーーーーー・・・・
光を噴射中の龍人の耳元で、忌まわしい高周波音が聞こえてきた。
グルァ・・?
慌てて光の噴射を止めて振り向きかけた白銀鱗の龍人めがけて、"
ドシッ・・
重く鈍い衝突音が鳴り、龍人が弾け飛ぶ。
しかし、咄嗟の動きで
続いて放たれた黄金光と熱風を、全身から銀光を放って無効化させると、白銀鱗の龍人が咆吼をあげてアルマドラ・ナイトに斬りかかった。
対して、アルマドラ・ナイトは真っ向から斬り結ぶ。
すでに、"
そして、龍人という"蜂"が出て来た。
"蜂の巣"作戦は完了している。
重たい曲剣の一撃を"
身を折って跳ね飛ぶ龍人が空中で身を捻り、何とか姿勢を整えたところを狙って、頭頂から"
龍人が、ぎりぎりで楯を持ち上げて受ける。だが、片腕で受け止められるような衝撃では無い。楯裏で龍人の顔面を殴り跳ばした形になり、再び、龍人が仰け反って姿勢を乱す。
アルマドラ・ナイトは瞬間移動をして真後ろから横殴りに"
しかし、故意か偶然か、長い尾が大剣の軌道へ跳ね上がって胴体の代わりに切断された。
ガアァァァーー・・
叫びながら、振り向いた龍人が曲剣で斬り払い、口腔から銀光を噴射する。
曲剣を打ち払ったアルマドラ・ナイトが銀光を回避して脇へ回り込む。
そこを、龍人が楯で殴りつけた。
同時に、アルマドラ・ナイトが"
龍人の顎下から側頭部にかけて切っ先が抉って抜ける。
次の動きは、互いに申し合わせたかのように似通っていた。
龍人が曲剣を放して、アルマドラ・ナイトを逃すまいと掴みかかり、アルマドラ・ナイトも"
期せずして、互いに抱きつく形で組み合っていた。
グルアァァーー・・
龍人が渾身の力を込めてアルマドラ・ナイトを抑え込みながら、首を捻って至近距離から銀光を浴びせようとする。寸前で、龍人の口に、するすると黒い触手が巻き付いて絞り上げた。
直後に、龍人が無声の苦鳴をあげて身を
押さえつけたはずのアルマドラ・ナイトによって、胴体がぎりぎりと抱き潰されていくのだ。
長い口をテンタクル・ウィップで巻き取られ、首を左右に振りながら、龍人が懸命に逃れ出ようと身悶えるが、
白銀鱗が破砕音を立てて割れ砕け、骨がへし折れる音が響く。
もうひと息で龍人の胴体が圧壊する。
龍人の眼が生を諦めて焦点を失った瞬間、アルマドラ・ナイトは龍人を放して大きく跳び
上空から放たれた一条の閃光が、アルマドラ・ナイトが居た場所を貫いて地上まで奔り抜けていた。直後、地上で凄まじい爆発が起こり、熱気が遙かな上空まで噴き上がって来た。
『使徒、アルカンダス・・主命により参上した』
どこか中性的な声が響いてくるが、上空にはそれらしい姿は見当たらない。
「お前の
アルマドラ・ナイトからシュンの声が響き渡る。
『そのレギ・ドラゴを生ある内に解放しろ』
「レギ・ドラゴ・・?」
『お前の界と、こちらの界を繋ぐ糸一本・・切れば二度と、同じ時、同じ場所には戻れぬぞ?』
「・・おまえ達は何をしようとしていた?」
『移住だ』
「移住・・」
『この世界は寿命を迎えている。別の世界への入植を行っているところだ』
「すでに、完了した者も居るのか?」
『お前のおかげで、予定より大幅に少なくなったが・・』
「この世に神は存在するのか?」
『2柱』
「・・少ないな」
どれだけ会話を重ねても、相手の居場所が掴めない。一方で、危険な感じだけは続いていた。
『レギ・ドラゴを解放しろ』
「・・分かった」
テンタクル・ウィップを振って、白銀鱗の龍人を投げ放った。同時に、VSSを握って龍人めがけて連射する。
キ、キィーーン・・
着弾寸前で、黒翼を生やした甲胄姿の巨人が現れ、鏡のような楯を手に銃弾を受け止めていた。面頬の下で睨み付ける先から、アルマドラ・ナイトが消え失せている。界を繋いでいた霊糸も消えていた。
『・・向こうの使徒は弱兵ばかりだと聴いていたが』
甲胄巨人は、半死半生のまま意識を失っている龍人を脇に抱えながら、地上に散った移民船の残骸を見下ろした。
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12月2日、誤記修正。
壺が内側(誤)ー 壺の内側(正)
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