I own you あなたは私のものです

たこみ

第1話 話でもちきり

どこからやり直せば、絶対的な優位に立てるのだろう。

あなたを見つけた日から、まっしぐらに進んできた。

あなたはそんな私に目もくれないけれど、毎日必死だった。

どこにいようとあなたを見失わないように、あなたが私を受け入れてくれるのをいつまでも待とうと決めていた。


「あんたを責めようとは思わないけどさあ、やってることはストーカーの一歩手前だと思うよ」

仕事の後にカフェで落ち合った詠美(えいみ)は手段を選ばない私に呆れた顔を見せた。


「今日も蒼汰(そうた)くんに私の想いを悟られないようにするの大変だったよ~」

「あんたを拒絶しない三上(みかみ)には頭が下がるわ」

「そうだね~。蒼汰くんは文句なくできた男だわ♪」


あの頃は気付かなかったけどと、私は高校時代の蒼汰くんに思いを馳せ始めた。

「あいつの良さはあんまり理解されてなかったもんね」

「社会人になってやっと日の目をみるようになったと思う」


私は首をかしげると、だけど今日は彼の様子が少し変だったと呟いた。

「予期せぬ不幸が起こったとか・・」

「考えられなくもないなぁ」


蒼汰くんは仕事がはかどらないと私に言った後、黙り込んだと詠美に教える。

「充(みつき)さあ、やるべきことはやってるの?」

蒼汰くんを観察している以外の時間はちゃんと仕事をしていると、思わず説得力に欠けることを言ってしまう。


「あんたの恋愛がいつも始まる前に終わるのがわかる気がするわ」

救いようがないという表情をする詠美に、自覚はあると認める。


「蒼汰くんを好きでいることが仕事をする原動力になるのよ」

きらきらした目をさせる私の横で、詠美は三上はあんまりあんたのこと好みじゃなさそうだけどねと意地悪を言う。


「詠美は最近どうなの?何か面白そうなことないの?」

大きなお世話と言いながらも、三日に一度は会っている人がいるという。

ほっそりした体系で、毒を吐く割には美人で気が利く彼女の周りには男が切れることがない。


「何してる人?」

「出版社」

「へ~、その人も詠美の餌食になるんだね」

「よく言うわ。餌食になってるのは三上でしょ」

蒼汰くんからいい返事など期待できないのだから、もっと生産的な恋愛をしろと詠美は言ってくる。


「でもさあ、ここ何年も蒼汰くん以外に震え上がるような気持ちにならないんだよね」

詠美はやれやれという顔をすると、あんたの努力が実を結ぶ日がくるといいねと言った。



















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