第6-4話 止まった空間

「………………」


 髪がなびいた。

 黒く長い髪がなびくのをやめた時、ましず は、自分が声をあげて何かを唱えていた事に、今、気づいた。


「…あれ?」


 辺りを見回すと、りんり の後ろ姿が見えた。その先に口を開けたマドゥィナがいて炎のブレスが口先に今まさに拭きだそうとしていたが、吹き出てくる様子はない。


「動かない、それって」

「時よ止まれ『ストップ』って言ったろうが」


 針田は、可愛いハリネズミ顔には似合わない呆れ顔で、 ましずの横まで空中移動する。


「覚えていない…って針田は大丈夫なの?」


 野次馬たちは、もともと時間は止められていたが、結界内は2人の声しか聞こえなかった。


「保護対象者たちに何かあったら責任とらないとならないからな。マジックアイテム等の対策はとってある。

 にしても、アプリだと躊躇するほど高額な時空魔法を、安々と使ってくれたな」

「りんり を助けようと必死だったから。

 本当は氷の魔法を使えたら、もっと良かったんだけれどもね」

「戦闘初心者ならば、恐怖心に狩られて動けなくなるのは当然だ。むしろ今回は りんり に落ち度がある。力技に頼るなとあれほど言ったのに……」


 ふぅとため息をついてから針田は、危なかっしい保護 兼 監視対象者を見つめる。


「りんり は、魔王族ガデバウム唯一の部下。あいつは、我が一族よりも過酷な運命が待ち受けているだろう。

 俺や静馬ましずがいる間に少しでも強くなってほしいものだな。

 もっとも、お前さんが、今回の戦闘に懲りたなら別だが」

「………………」


 ましず は、少し間をおいてから口を開いた。


「正直、恐かった。

 でも、ごめん。魔法少女はやっていきたい」

「なぜ続けるのに謝るんだ? まぁ、いいが」


 りんり の後ろ姿を見つめる ましず の表情を見た針田は、それ以上 聞かないことにした。


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