第6-3話 炎竜嬢のブレス
「ちょっと待って、レベル6って? 魔法ってレベル5までじゃないの?」
ましず が疑問を口にするのも当然だろう。昨日、聞いたばかりの情報と違うのだから。
「そうなんだよね。魔法レベルは5が基本なんだけれども。ただ、例外があるのよ」
「その能力に長けた、純血なる一族、まあセレブ共だな。レベル5を超えた高い魔法威力を持っている奴が多い」
りんりの話を捕捉してから、針田はハリネズミボディより大きな魔方陣を小さすぎる手の平から生み出し、野次馬の1人に当てた。
その作業を野次馬全員にしているようだ。
「…」
『どうする?』と ましず は りんりに視線を向けて相談しようとしたが、マドゥィナは暇を与えなかった。
口をぱっかりと開き炎が現れるが、鮮やかな赤色で今までより高温の炎を表している。
『氷壁 / レベル5』
ましず はマドゥィナの前に壁を設置して炎を防ぐ、はずだった。
「!」
氷が簡単に溶けた。
マドゥィナの前に設置した壁は、大きめの冷蔵庫を2つ3つ並べたほどの分厚い壁だったが、まるで綿アメのように溶けて、炎がましずに向かってくる。
予測していなかった ましず に新たなる魔法を唱える時間はなかった。
『吹き飛ばし /レベル4 』
ましず の右頬 を突風が通り過ぎて、後から黒髪がなびいた。
りんりが戦扇で生み出した突風が、氷の壁から出てきた炎に向かう。
高温の炎を壁の奥へ押し込み、炎をマドゥィナに吹き飛ばす。
「ふん」
マドゥィナは、ぱっくり口を開けると、向かってくる炎を吸い込んだ。
「ましず、氷の魔法を出して。吹き飛ばしで援護するから」
その様子を眺めている余裕はなく、マドゥィナの行動を予測できた りんり は ましず に魔法の指示を出す。
「魔法…えっと」
ましず は魔法を唱えるため身構えるが、頭は魔法を唱える言葉とイメージが出てこない。
「……」
氷をイメージしようとするが、炎が向かってきた恐怖がそれを邪魔する。
「…………氷の、魔法」
頭にイメージしろと必死に命令する間にも、炎を飲み込んだマドゥィナが次の行動を始めようと口を動かした。
『吹き飛ばし /レベル4』
りんり は再び突風を作り出し、穴のあいた氷壁に向ける。
マドゥィナは簡単に避けた。と言うより、炎であけていない氷壁の面積は広く、体を少し動かせば、簡単に避けられる。
その様子を見て りんり は走り出した。
氷壁に近づいて、高く跳びあがる。人間離れした魔族、雑種だがドラゴンが持つ脚力をフルに使う。
「はぁっ」
りんり は跳び蹴りで氷を砕き、近くに隠れたマドゥィナに落下させる。
「だめだ、りんり」
針田の警告声行動が聞こえた。
りんり の跳び蹴りにより氷は砕かれて落下した。
だが、落下付近にマドゥィナの姿はなかった。
マドゥィナは、りんり が着地した正面にいた。
口をぱっくりと開けて。
「…」
りんり は時が止まるのを感じ取った。
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