第82話
「もちろん、いいさ」と、金太。
「ぼく、これまでずっと考えとったんやけど、確かにぼくもアイコも金太にイジメから助けてもらった。アイコはどう感じているか知らんけど、もし金太の救いがなかったら、ぼくはどうなってたんやろね。いまだにイジメを受けてたんやろか。そんな疑問が頭からずっと離れん」
ノッポはふたりの目を見ないまま話した。
「わたしもノッポと同じことを考えたわ。そして自分なりに出した答えは、やっぱり自分自身が勇気を持たなきゃだめだという結論に達したわ」
「賛成。ぼくもアイコと同じ意見やよ」
ノッポは賛同者がいたことを心から喜んだ。
「意義あり。ふたりが言うとおり、勇気を持つことは大事なことだよ。でもそれはあくまでも理想。じゃあ、ふたりに訊くけど、そうやって自己分析をしたあと、すぐにイジメに立ち向かう勇気を持つことができた? オレはそんなに簡単に気持を切り替えることなんかできなかった」
金太は冷静な口調で諭すように話す。
「――」
ノッポと愛子は金太の意見に反論できなかった。
「オレもイジメに遭ってるとき、きみたちと同じように毎日ベッドに入って何とかしたいと考えたさ。でも朝起きて学校に行ったら、頭の中がなにもなかったように真っ白になっているんだ。それを繰り返しているうちに、段々自分自身が嫌になり、ついには思いもしないところで八つ当たりをして、知らない間に周りのみんなに迷惑をかけてた。
でも自分では気づかずに、なんでオレの気持をわかってくれないんだ、と逆恨みしたこともあった。そんなとき姉ちゃんが救いの手を差し伸べてくれて、ようやくイジメから逃れられたんだ。そこで気がついた。いくら強がりをいっても、自分ひとりでできることとできないことがあるってことを」
金太は、自分が経験したことをふたりに滔々と話した。
「スゴかね、金太は。それがあったけん『ロビン秘密結社』という救済組織を作ったんや」
ノッポは友達である金太を褒め讃えた。
「違うよ、ノッポは大きな勘違いをしてる。そんなんじゃないんだ。結果的にそうなったかもしれないが、ロビンは正直言うとそこまでは考えてなかった」
「でも助けられたことは間違いないわ。金太には感謝しないといけない」
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