第3話

 入り口の看板には、へたくそな字で『ロビン秘密結社』と書かれてある。

 秘密基地は、粗末な看板でもかけられたことによってなんとなく様になったように見えた。

 金太は看板を前にしてカナヅチを手にしたまま腕を組み、満足げな笑顔を浮かべて見つめている。

 周囲の無遠慮に繁茂したエノコロ草やかやつり草などの雑草を抜き取り、両手に青臭い匂いを滲み込ませたまま、ふたりは小屋の中に入った――。

「これから結成式をとりおこなう」

 金太は神妙な顔付きになってネズミに伝える。

「うん」

 ネズミはいつもの遊びの延長であるかのように、日に焼けた黒い顔で軽く返事をする。

「ネズミ、わが秘密結社に、うんと言う返事はないんだ」

「うん。――でも、そのロビンって、どう言う意味?」

「よく知らないけど、英語でコマドリのことみたい」

「ふうん。でもなんでそんな名前つけたの?」

「この前読んでた本で見つけた。意味はないけど、ちょっとカッコイイなとと思って、そいで」

 ふたりはいそいそと秘密の小屋に入ると、工事会社が置いていった木製の薄汚れた机に向かい合って座り、顔を見合わせた。

 金太は机に顔をよせると、くちびるを尖らせておもいきり息を吹いた。たちまち堆積していた埃が白い烟となって小屋中に充満した。ネズミは咳き込みながら慌てて小屋の扉を開けに走る。そしてふたりは思わず顔を見合わせて大きな声で笑った。

 金太はゆっくりと小屋のいちばん奥に拵えてある棚に近寄ると、載せてあった金属製の菓子箱のフタを開け、中から忍者の巻物のようなものを取り出した。

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