よく食べる彼方

エリー.ファー

よく食べる彼方

 あそこにブラックホールがある。

 またこともないほど大きく、何でも中に吸い込んでしまうそうだ。

 正確には吸い込むというよりも、近づけて圧縮するという形の方が近く、それによって多くのものが消え去ったことは間違いない。

 多分、性格があったとしたら我儘だろう。

 ブラックホール。

 宇宙船で近づいたグループもいたそうだが、残念なことにその結果は見るも無残だった。不憫極まりない。気が付けば何もなくなり、何もかもそのブラックホールの中心で、渦を巻いていたという。

 ブラックホールにはその特性として、不思議な点が幾つかある。

 一つは、ブラックホールは何個も点在しているということだ。

 そのため、そのブラックホール自体はワープホールとしての機能も果たしており、その多くから他の宇宙次元での光の観測なども可能とされている。あくまで、それは推測の域を出るわけではないのには、理由があり、それらを真実、もしくは事実と確認するための実験する手段が存在していないことがあげられる。

 そして。

 もう一つ。

 皆が、そこまでブラックホールというものの可能性について論じることは可能でも、そこから抽出されるであろう、研究結果がそのまま私たち地球人の生活や文化の繁栄に寄与するとは考えにくいことにある。

 つまり。

 ブラックホール自体もそうだが、その一部分、語弊を恐れずに言うのであればその破片でさえ、人間という生き物に使いこなすことは不可能なのではないか、そう考えるのが妥当である、という事なのである。

 これ自体には、多くの宇宙学者、物理学者等が考えを巡らしている。実際、宇宙には無限の可能性があると言ってもいいが、そこで得られた結論を、いかに日常生活に応用するか、ということまで考えればそもそも、リターンが期待しにくい、もしくはリターンが発生するまでに時間がかかりすぎるのである。

 多くの研究に言えることではあるが、それらがより顕著に表れてしまうのが、この宇宙という分野の厄介な点である。

 戦争などでつくられた発明品が人の生き方や、後の文化に影響を与えたことは間違いがない。しかし、それらは期待して存在したものではなく、二次的、三次的、場合によっては四次的なものであったのだ。

 この、遠回りな結論、もしくは、思考の逸脱と、論理の飛躍からなる、現実的な時間の流れとの矛盾を解消する手立てが存在しないことは、後々大きな問題になるとは思われていたが、今現在、それらが顔を覗かせている。

 これは、技術の発展に、文化の発展、もしくは人類が持ち合わせるべき道徳性の遅滞が原因であると考えられており、それらは、これからの科学などの発展によって埋め合わせのできる部分ではない。

 明らかに、人間は、人間の手によって生み出された時間の速度に後れを取ってしまっている、というのが実情という事になる。

 今後、このような問題の解決には余り時間がかからないと思われる。何故ならば、そのような問題の解決は圧倒的な事実の削除、もしくは原因分析の必要性のなさからでしか生まれないからである。

 人類の滅亡が近い、それが人類をこの悩みから解き放つ唯一の手段であると理解できるのもそう遠くない未来なのである。


「よく書けるよね、こういうこと。」

「信じるやつはいるかもね。知らないけど。」

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