8-27話 素顔のジャイスと氷の結晶
──ジャイスの正体には驚いてしまったが、ガキ相手だとわかったからにはお兄さん達が更正させないとな。
重い攻撃を何度も受けながらも、まるで不死身の体を得たかのように毅は完全復活した。最後の大技であるクレイジー・スターダムで不気味な七色の一角・ジャイスを撃退し、奴の素顔を晒すことに成功する。
「貴様ら、貴様らなんかにIQ199の頭脳を持ち、教育心理学者から将来はメンサ会員確実と言われたこの天才13歳のボクさまの素顔を見られるとはー」
しかし、肝心のジャイスの中身ははまだ13歳の坊主頭の少年であり、IQ199の頭脳を自負する自称天才児だった。あまりに予想外の正体だったため、俺達3人は驚きを隠せなかった。
「こいつがジャイスの正体だと? ガキも多くいるのか虹髑髏は?」
たしかにさ、虹髑髏は関東を中心に暗躍する日本屈指の犯罪組織だ。中にはRARUや元同級生の豊四季みたいに15歳でも所属している工作員はいたが、年齢的に中学生だと思われる13歳のジャイスまでが入れるとなればさすがにそれで恐ろしいな。
「ボクさまは将来上級国民になる男だ、こんな下級国民共に捕まるわけにはいかずに目的を成し遂げるんだ!」
何が上級国民だよ、こいつどえらいこと言いやがった。最近ネットとかでも話題になってるが、犯罪を犯す奴に下級国民も上級国民も全く関係ないと俺は思ってる。
ま、ここで弱まってるジャイスを少年院に送れば、奴は叶わぬ夢になるな。
「まだ戦いは終わったわけじゃないぞ貴様ら! いくらフードと仮面がなくてもボクさまはまだ戦えるんだぞ、七色の意地を見せてやる」
「いい気に乗るんじゃねーぞジャイス! まだガキだし基礎体力なんて全くできなさそうなミステリークズ野郎……ガリ勉ハゲ野郎がよ!」
素顔にも関わらずまだ俺たちにあの態度を取るのは本当に気に入らないな、ジャイスを育てた親の顔か見てみたいぜ。生意気なガキは
それと、こんな緊迫した場面なのに毅はまた変な名前をつけたな。あの見た目なら、ミステリーよりガリ勉の方がお似合いかもしれないな。
「覚悟しな、スターダスト・アーチで今度こそてめぇはおしまいだ!」
「頼んだぞ毅とやら、最後の一撃でジャイスとやらを更正させてやれ」
俺と加藤は毅に託しているし、怒りの頂点である毅を誰も止めることはできない。自身のスターダスト・アーチを最大限に込めて、素顔のジャイスに決着をつけるため襲いかかる。
「バカめ低能が! インテリジェンス・シールド!」
「な、これは?」
ジャイスの奴、生身の体では俺や菜瑠美と初めて会ったときにも使った四角形の盾の技をここぞというときに出したな。
しかも、インテリジェンス・シールドを使うとき、頭に右指を指しながら左手だけで防ぐという崖っぷちにも関わらず荒業をしてきた。素顔と正体が判明していても、毅を見下してる証だ。
「こんなガキなんかに、ぐっ……」
「猪突猛進かな君は? そんなんでボクさまを捕まえることなんてできないよ」
この盾により、スターダスト・アーチは全て防がれてしまい、毅は体ごと吹っ飛ばされてしまう。むやみに反抗したらジャイスの思うつぼだし、1人で戦うのには無理がある。
「代表! たった今金田さざなみ公園に……嘘でしょ……」
「おおラルか、いいときに来てくれた」
ちっ、こんな都合悪いときRARUが金田さざなみ公園に現れやがった。誰かに変装して襲ってこないだけ大分ましだが、残虐非道な女だ。
一方のジャイスは見る目を変えたかのように、後方に移動した。インテリジェンス・シールドを出しただけで体力を消耗したみたいだが、都合よくRARUにバトンタッチか?
「信じられない、あの3人がが代表の素顔を暴くとは……組織全体を見ても正体を知るのは一握りだというのに、あんた達覚悟しなさい!」
ふーん、ジャイスの素顔は虹髑髏の中でも知るものは少ないのか、こんなときになかなかな情報を得たな。RARUもおかしな奴だぜ、こんな生意気なガキを強く慕っているのだから。
「さっきはうざったい桜井を殺し損ねたんだ。その鬱憤をはらすために、代表を追い詰めたあんた達をここで殺すよ」
なにっ、『わだつみ』に入ってから虹髑髏討伐とソードツインズを救うため、血のにじむ努力をしてきた桜井さんがRARUにやられただと? 俺の頭は桜井さんの安否を心配することに気持ちが切り替わり、つくづくメンバー思いなんだなと感じてしまった。
「毅、俺も限界だ……戦わせてもらう」
「仕方ないな令、あの女は任せた。俺は後ろに行ったジャイスをどうにかする」
俺だってソードツインズを拉致して虹髑髏の工作員にさせたRARUを許せないし、ここでジャイスとまとめて捕まえる気持ちしか沸かない。得意の衝撃波を使われる前に、桜井さんの分も込めて全力でRARUと戦いぬくか。
「令とやら、毅とやら。後ろから何か来るぞ」
「え?」
ジャイスやRARUまで攻めようとするなか、加藤の言葉により特別な何かに気付き、俺と毅は一旦停止する。ここでレイラ達が来たとか最悪の流れだから、それだけはやめてくれ。
「なっ、俺達を通過した?」
背後から大型の地を這う流れの氷の結晶が俺と毅の前から勢いよく通りすぎ、その結晶はRARUの元へと向かっていく。
「なによこれ……いやっ! いったい何が起きたというの?」
「落ち着けラル、敵は3人だけはなさそうだ」
結晶がRARUを襲ったということは、俺達の仲間が来た……のか? 氷の結晶を受けたRARUはそのまま倒れこみ、怒りに満ちた顔を見せる。
「この氷の結晶……まさかあの人が来たのか?」
「知ってるのか毅!?」
これを見た毅は表情が変わり、すぐさま俺達の後ろを向いた。毅にはこの結晶に見覚えがありそうだし珍しく毅があの人呼び、まだ見ぬ刀梟隊が来たのか?
「本来なら本日のわたくしは休暇なはず……ですが、今は追加任務を遂行します」
後ろを見た先には、灰色のスーツ姿でネクタイも着用した金髪で菜瑠美ほどではないがロングヘアの女性……いや少女らしき人物が突如として現れた。目をよく見ると、右目が碧眼で左目が赤眼というオッドアイであることも大きな特徴だ。
彼女の左腕には濃い灰色と黄色で『刀梟隊』と赤色の文字の入った腕章を着用している。彼女も刀梟隊であることは間違いないが、別行動を取っている半蔵さんが臨時招集した刀梟隊の隊員か?
俺の中で1番注目したのは、白色の手袋を装着しながら左手で持っている氷の剣だ。さっきの地を這う流れの氷の結晶は、彼女の持つ氷の剣で振り回したものなのか? しかし、下半身はかなり短いタイトスカートで黒色のハイヒール、ましてやスーツ姿だしまともに動けるような衣装ではないと思うが。
「なによあんた? 見た目がかわいいからって容赦はしないよ!」
「貴女の本名は志野田來璃……貴女は変装の名手として、ここ最近組織全体からの虹髑髏要注意人物としてリストアップされていた若き能力者」
「へぇー、私のことを知っているなんて生意気ね」
「年少ながら貴女の犯した罪は数えきれません、今ここで貴女を拘束します」
隊員らしき彼女はRARUのことを語り、氷の剣をRARUに向けた。いったい何故だ……まだ若い見た目なのに、説得力と威圧感が俺や毅なんかよりも全然ある。
「毅さん……貴方はあの者達に苦労してるみたいですね」
「それよりも、何故お前がここにいるんだよ。昨日は別の任務で島根にまで行ってただろ」
どうやら、彼女は昨日島根での任務を終えたあと、遠く離れた千葉の木更津まで来たようだ。俺からも心の中でわざわざご苦労様と思っておくか。
それに、毅がタメ口で話してるから、立場的には毅の方が上なのか……しかし、毅の口から合流した女性隊員の衝撃的な事実を知る。
「毅、あの人も刀梟隊でいいのか?」
「ふっ、聞いて驚くなよ令。あの女は若干16歳にしてAYBS組織全体の幹部の1人、そして俺達刀梟隊の隊長である二木愛弥だ!」
「は!? 彼女が隊長だと!? どう見てもまだ女の子だろ?」
おいおい嘘だろ、刀梟隊の隊長が俺と同い年の16歳だなんて聞いてないぞ? 学年まではまだわからんが。
たしかにさ、木更津に向かうときから刀梟隊隊長の存在は気になってた。その隊長が
「まだ戦いの最中ですが影地令さん、加藤炎児さん、初めまして。貴方達のことは存じております」
RARUが疲れ果ててるあいだに、刀梟隊隊長が俺と加藤の目を向けて敬礼をしながら挨拶をしてきた。
二木愛弥、容姿だけに限ると菜瑠美と同じ雰囲気を持つ無垢でミステリアスな金髪美少女だ。おまけに、菜瑠美程胸はないものの美脚っぷりとウエストの細さは菜瑠美以上だ。
このあと、虹髑髏第5部隊相手に愛弥隊長の本当の強さが明らかとなる──
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今回は令視点での愛弥との初対面シーンで締めました。桜井視点とは違う感じにしたかったため、かなり苦戦しました。
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