5-12話 菜瑠美の真の闇 ※菜瑠美視点

 ──私の持つ『闇の力』には、まだまだ私には知らない何かが隠されていたようです。そして、とても恐ろしいものであることも。


 私はアナーロに縄で緊縛された上に、アナーロの汚い手でお姫さまだっこされたまま、校内の屋上へと向かわされています。こんなこと、夢ならすぐに覚めてほしい……。


「屋上に着いたわ。まだ静かな場所だけど、華やかにするわよ」

「んんんん……」


 無断で屋上へ連れ去って……今度は私に何をする気なの? すると、私とアナーロ以外にも誰か屋上に来たようです。もしかして、虹髑髏内における新たな増援?


「どうやら、今回の作戦の保証として追加で招集したメンバーが来たようね。さてと、菜瑠美たんにとっても久々な連中達とも会わせてやろう」

「んん……?」


 久々な連中達ですって? 思い当たる人物がパッと出てきましたが、アナーロと手を組んで私の前に現れるなんて……。


「久しぶりアルな、お嬢さん」

「ついでにあのクソ王子様もいれば、俺達の気分は爽快だったのにだべ」

「んんん……んんん………んんんんんん」


 私の予想通り、何度も私の『闇の力』と今はつかさが持つ『光の力』とペンダントを奪おうとした2人組、ファルとデーバまで屋上に来ていたなんて……余計に私の精神が狂いはじめてきてます。


「あんた達、この前別の作戦中でヘマかましてハイトからの信頼を失われているのよ。仮に、この作戦に成功したら正式に第4部隊に人事異動させてあげるわ」

「いいのかだべか、アナーロさん頑張ります」


 ファルとデーバは相変わらず虹髑髏の中でも下っぱの分類みたいですね。悪いですが、この作戦は失敗します。私を助けに来てくれる人がいますから。


「とにかく、今は屋上のドアの見張りをしてなさい」

「はいアル、任せるアル」

「んんんん……」


 教室には未衣と麻衣が、屋上のドアにはファルとデーバが見張りをしています。アナーロの野望が一刻と近づいていますが、こんな人達は、後から来てくれるつかさに絶対倒されます。


「これで、私の邪魔になる奴も今はいない。未衣と麻衣も順調のようだし、私はしばらくの間は菜瑠美たんと遊ぼう」

「んんんん……」


 アナーロがまた嫌らしい顔をして私に近づいてきます、本当に来ないで……。

 私が今、身動きがとれないのが本当に悔しい……縄を『闇の力』でどうにかしたいのに、この縄は普通ではない。

 たしか、稲毛で初めてアナーロと遭遇した時、私はアナーロに抱きつかれました。この縄も、アナーロが持つ『STYLEスタイル-Nエヌ』に関係してるのかもしれません


「ほぉっ、素晴らしい数値だね菜瑠美たん」

「んん?」


 アナーロは自らかけていた眼鏡で何かを測ったあとに、なにか不敵な笑いをとりました。一体、何をやったのですか?


「私の分析によれば、菜瑠美たんは身長160cm・体重47kgと細目に反して、バスト96・ウエスト54・ヒップ87なんて素晴らしい体型じゃないの。おまけに、Iとか完璧すぎるわ菜瑠美たん」

「んんん……?」

「やっぱり菜瑠美たんは外見に限らず、体型も今まで私が襲った女の子の中でも最高の逸材よ。さすが、


 アナーロは私のことをなんだと思っているの? おもちゃであると思ったら大間違いです。

 ここで私が目の前にいる中で体重や3サイズを分析した挙げ句、暴露までするなんて。それと、なんなの私の妃って? 私には……私には……恋人がいます。


「菜瑠美たんも胸ばかり目が行くかもしれないが、脚もすばらしいよ。そして、素敵な下着履いてるわね菜瑠美たん」

「んん……んんん」


 今度は私の両足をアナーロの手で大きく広げ、パンスト越しのパンティーを嫌なそうな顔をして眺めてる……そんなのを見て平気な顔をして興奮するなんて、どんだけ変態なの。

 こんな最悪な状況なのに、私は縄でほどかれないまま泣くことしかできない……先週の手合わせでもっと強い能力者を目指していたつもりが、今は囚われの身のただ弱いだけの存在です。


「さあ菜瑠美たん、いつまでも口封じされていては可哀想だからガムテープを剥がしてあげるよ」

「んんん?」


 ガムテープを剥がす? 息もできるしことですし、それだけ聞くといいように感じました。

 しかし、それはアナーロが人間として疑うかのような悪質極まりない行為をやりだしてくるのです。


「んー」

「んんんん!」


 嘘でしょ……アナーロが私にキスを迫ってくるなんて、信じられない。私はつかさ以外の人間と唇を重なり合う……ましてや、生理的に無理な男なんかに私の唇を奪われるなんてあり得ない……。


「菜瑠美たんの唇はとても素晴らしいよ、んーー」

「んんんんんん! いゃあああああ!」


 ついに、アナーロがガムテープを剥がし、私の綺麗な唇をつけようとしてきます。このまま、つかさからの助けもなく、最悪の瞬間が訪れるの……。


「え、私の体に……?」


 すると、アナーロにキスを責められる瞬間、私の体が突然として紫色に染まり始めました。これは私も全くわからない事態ですが、夢ではなさそうです。


「ちょっと、どうしたのよ菜瑠美たん! うわぁあああ!」


 紫色に染まった私の闇がアナーロを弾き跳ばすことができました、明らかに自業自得ですね。なんとか、キスから免れたのはよいのですが、縄はまだ緊縛された状態です。

 

「きゃっ、縄が突然……でも、この『力』で助かりました」


 数秒経過していくうちに、アナーロによって緊縛された縄が私の闇によって焼かれて私はまともに動けるようになりました。晴れて自由の身になったとはいえ、私はまだアナーロの魔の手からまだ逃れたわけではありませんので喜んではいられないです。


「なんとか、私の知らない新たな『力』で救われました。しかし、今の状態が……逆に言い換えると、これは凄まじい『力』である証」


 私は両手を眺め、何かの恐れがでました。強力なものを手に入れたと同時に、使い方を誤れば死を招くこともあると思いました。

 ただし、アナーロを吹き飛ばすことができたこの『闇の力』のおかげ……今、ここでアナーロを制裁するには最適なものだとは思います。

 まだ上手く扱える自信はありませんが、この『力』は私自身が邪悪に染まってる状態のため、つかさには見られたくない。つかさがいないのであれば、使わない以外に手はありません。今まで流れていた涙さえ、消えてしまったのですから。


「な、なんなのよー! せっかく菜瑠美たんとちゅーできたと思ったのに」


 私の中では、アナーロからの口づけを回避しただけでも満足です……でも、この『力』が何故発動したのかが私にもまだ理解できません。

 私が窮地に陥った時に出たというのはわかりますが、たまたまである可能性もあります。今はそれよりも、アナーロをどうにかすることが先です。


「もういいわ、私の『STYLE-N』で闇に染まった菜瑠美たんを正気に戻して今度こそちゅーさせるわ」

「私は……闇に染まったこの『力』を信じる。アナーロ、あなたは絶対許さない!」

 

 これが、私の持つ『闇の力』の潜在能力なのかもしれない……普段の持つ物よりも、何倍もの『力』が実感します。

 私はまだ、。ですが、私を2度も恐怖の目にあわせた上、拉致までもして今もキスしようとする──

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