1-2話 闇の巨乳美少女
──朝の日差しに恵まれた船橋市に、突然2つの強い雨雲が訪れたような感じだった。
「助けて……ください……」
2人組の悪い奴らに襲われている少女を目撃した俺は、どうすればいいのかを脳内で4つ案が思い付いたが、それぞれメリットとデメリットがあった。
少女を見放して学校へ行く? 確かに俺は無関係の人間だから、首を突っ込む必要性は皆無だ。しかし、少女がピンチだというのに見て見ぬふりなんてできるわけない、仮に誘拐殺人事件にも発展したらどうするんだ?
俺自身が少女に代わって大声を出すというのも悪くはないが、出した時点で奴らは逃げるだけになる可能性もあるし何より近所迷惑になる恐れもある。それと、少女も俺の第一印象がまずく感じてしまう。
今ここで隠れて警察を呼んだらその場で奴らを逮捕できるが、警察が来る時間もあるし電話してる最中に奴らにバレる可能性も高い。それに俺だけでなく少女までも署で事情聴取され、互いに入学式を欠席扱いされる。
やはり男としての見せ場なのは、俺1人だけで少女を助けることだ。上記の案より危険性は遥かに高いが、その分少女を助けたという功績は相当大きい。
自身のみで少女を助けることにした俺は、公園の草むらに隅々と隠れて少女と奴らの対話を盗み聞きした。
「その手……離してください……」
「過去に何度か取り逃したが、今回こそそういう訳にはいかないアルね、さあわしらと一緒に行こうか」
「俺達は、お嬢ちゃんの持ってるペンダントと『力』が欲しいんだべ」
「あっ……」
「へへへ、お嬢ちゃん相変わらず素晴らしくでかい胸してるべ」
「嫌……どこ触ってるの……」
「わしらが欲しいものはペンダントと『力』であって、ボディタッチは程々にしろアルよデーバ」
「ファルよ。おそらく俺の勘には、制服のポケットにペンダントを隠してるだべ」
奴らの目的が少女の持つペンダントと『力』であることがわかった上に、自ら名前を言ってくれたのが俺にとってはいい収穫だし奴らが少女を狙う動機もわかった。
アル語尾で少女の腕を掴んでいるのが『ファル』、だべ語尾で少女の胸を触っているのが『デーバ』と言うのか。何かのコードネームか?
話によると、少女は過去にも奴らに追われてたようだが、奴らが言ってた『力』はさっき少女が使っていた手に出していた光のようものか?
だがな、俺が一番頭にきたのは、ファルに注意されつつもデーバが少女の胸を何度も触りだしたことだ。恐喝に誘拐未遂まで加え、公園という公共の場で性的行為も働かすときたら流石の俺も我慢の限界ときた。
「さて、次はこのスマートな足をだべ」
「やめて……」
表情に涙目にもなった少女を助け出すには、どう立ち向かえばいい? 奴らの隙を突くか、それとも強行突破か? 俺は考えるうちに、思わず草むらに音を起ててしまう。
「ん? そこに誰かいるみたいアルね」
「まさかさっきのガキだべか?」
「……!」
「だとしたら顔見せるアル、お前ムカついてたんだアル」
俺のうかつな判断で、奴らの怒りを買ってしまう。
更にファルは、手からスタンガンを取りだし、草むらに隠れていた俺に向かって当てようとした。当たったりなんかしたら、俺は入学式処ではない。
だが、怒っているのは俺も同じことだ。奴らの悪行もさることながらも、今日から高校生となる少女の命も狙ってるんだ。
「ガキぃいいい!」
「いきなり来やがったか」
憤激したファルが、スタンガンを持って草むらに隠れていた俺に対して、突っ込んで来る。当たったからでは取戻しがつかずそっと後ろを見たら、木があった。俺は木を壁代わりとして使うことを思い付いた。
しかし、この木が分厚いかどうかもわからないし助走もなさすぎる。これはもう一か八かだ。
「くらえアルぅうう! なにっ?」
ファルがスタンガンを振ってくる瞬間に木を両手で蹴りあげ、バク宙返りを決めてかわすことに成功する。ファルは勢い余って木にぶつかった挙げ句、所持していたスタンガンも右膝に触れてしまう。
「がはっ、なんだこのガキは! 忍者アルか?」
「違うな。それに女の子に痴漢したりスタンガンなんか持ち歩いたりしてんじゃねーよ、ここから立ち去ってくれ」
公園の真ん中に降り立った俺は、再び奴らと距離を近づかせることに成功する。自業自得で倒れたファルを見たデーバが俺に怒りを現した。
「や、野郎! 王子様気取りしやがってー、次は俺が相手だべ」
「きゃっ……」
少女を地面に押し出した後、今度はデーバが棒のようなものを振り回して、俺に襲おうとした。ただ今度は壁となる場所が半径5mにないし、奴はもう俺に当てることしか考えてない。ここは隙を伺うしかない。
「もう容赦しねぇえええ! 喰らえたべ!!」
「下がガラ空きだったな」
「なっ? 股に?」
俺はデーバが振り回す瞬間にしゃがんだ。その間、デーバの両足の間をヘッドスライディングする勢いで潜り抜け、デーバが困惑してる間に所持していた棒を取り上げて地面に落とした。
「このガキぃいい! かわしたまで俺の棒までぇえええ!」
「お前ら、スタンガンや棒を人に向けて当ててはいけないと誰かに習ってないのか?」
「くそぅううう!」
両足の間に滑りこむのも、決して容易ではない。読み間が悪ければ、俺の頭がデーバの足に当たってしまい、そのまま棒で叩かれてしまう。それと自らの意思で頭に当たるなんて致命傷だ。
ま、デーバの両足の間が狭かったらこの動作は不可能だった。俺がやや小柄であるのも1つの救いか。
なんとか奴らの奇襲をかわした俺は、倒れている少女の所へ向かう。
「おい大丈夫か?」
「……あなたは?」
少女とは初対面とはいえ、ここは話し掛ける以外はなかった。少女も俺を見て、特に恐怖心を抱いておらずむしろ尊重したような感じで俺のことをじっくり眺めていた。
改めて近くで少女を見ると、やはり推定Hカップの豊満な胸に、目が凝視してしまう。
「話は後だ、すぐに立てるか?」
「はい」
俺は少女に手を差しのべて、少女は何の不満もなく立ち上がった。
実際に立ち上がると、少女は俺と身長は差ほど変わりない。ただ、少女は3cm程のヒールが入ったローファーを履いている為、実際は160cm前後か。
少女が立った瞬間も胸の揺れ具合も気になってしまうが、今は胸なんて見ている暇なんてはない。奴らはもう怒りの頂点に達している。
「もう絶対許さないアルよ、自称王子様よー?」
「お嬢ちゃんが我が組織の元に渡ったら、俺達が所属する第6部隊の評価が上がるんだべ! 今すぐこっちによこすんだべ!」
「誰がお前らなんか卑猥な奴に可憐な女の子を渡すか!」
「……」
どうやら奴らは、なんらかの犯罪組織に属していることと部隊が何隊あるかどうかもわかった、奴らの着ている『6』の長袖Tシャツはそういう意味だったのか。
少女は既に俺の肩に掴まり怯えている。さっきと違って1人では立ち向かえない。ここは少女を連れて学校まで逃げるが、もう俺を許さない顔をしている。
「卑猥とは随分汚い言い方したアルな王子様よぉおお!」
「なん、ぐはぁ!」
俺が少女を庇っている仕草を見た隙に、ファルによって顔を殴られてしまい、少女は俺に心配そうに近づいた。
「大丈夫……ですか?」
「このくらいなら問題ない、にしてもよくも殴ったな」
「だべだべだべ」
1発殴っただけにも関わらず、奴らは何やら不敵な笑いをしていた。一体どういう意味でにやけているのだろうか? 俺はファルに殴られた以上、仕返そうとする。
「待っ……」
「うぉおおおおお!」
俺は奴らに、再び歯向かおうとしたかった為に、少女の声が聞こえなかった。それに奴らが笑っていた本当の理由が、俺の拳に意味をしていた。
「おい王子様、今ここでわし達を殴っていいと思ってるアルか?」
「今ここで俺達を殴れば、お前は直ぐ様暴行で退学処分だべよ」
「なっ?」
悔しいが奴らの言う通りだった。確かにここで奴らを殴ってしまえば、俺は制服着ただけで1日足らずで、高校生活が終わるという最悪な結末になる。少女も殴ることも望んではないだろうし、ここは殴るのをやめて思わず引き下がることにした。
「わしらは大人だし、何より悪人だからお前のことをここで最悪殺してもいいアルね」
「俺達の邪魔物をしたお前、許さないだべ」
「がはっ、ここまでか」
俺は更なる追い打ちをかけられ、再び倒れこんだ。ここまでやられたのも他にない、さすがの俺ももう限界だ。
出逢ったばかりとはいえ、少女を護れないままここで入学式に行けずにいるのか。少女の言う通りに待つべきだったか。
「なあデーバ? とどめは組織が伝授した技でいいアルか?」
「それいいなファル、俺達の合体技でこいつを始末するだべ」
「くっ……」
ファルは左手を、デーバは右手をそれぞれ手を揃えて氷みたいな物体を出してきた。
「死にな! 俺達の合体技
まさか奴らに、こんな切り札があったとは思わず、当たったら凍死を覚悟した。
「やめてください!」
「えっ?」
俺の前に少女が現れる。少女の手から、紫色に染まる球体を両手から出そうとした。
その紫色は闇に染まる邪悪さが目立つものの、輝かしさも残っていた。
「なんだ彼女は? ベンチで使っていた光だけでなく闇みたいなものも使えるのか?」
少女が2つ目の『不思議な力』を見た俺は、驚きを見せた。暗めの光とは対照的な明るめの闇であったことを。これで奴らの双晶氷柱を防ごうとするのか?
2つの『不思議な力』を持った少女は本当にこの世界の人間なのか? 俺はますます少女の秘密を知りたくなってきた──
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