第26話 魔道巨樹ソーサリートレント
人間と
組織ダルタークの女幹部ゼルビア。彼女の暗躍によって、シルカが
あの時は何とかカイトが
今、目の前にいる
トレントと魔道士の
それだけではない。その女魔道士の
「ぐっ!」
「うあっ!」
今度はシルカとレミナが同時に耳を抑えた。ミリアは少し顔を歪めただけ。
「ど、どうした2人とも?」
「また不快な魔力の波動が」
「私の方は、甲高い奇声のようなものが聞こえた」
「甲高い奇声?」
問い返すレイダーにレミナは頷き返す。
おそらくはハーピー族のレミナにしか聞こえない奇声だったのだろう。魔族には多種多様な種族があり、聞こえる音にも差があるとミリアはベルモールから聞いた事があった。今回のもその音だったとミリアは判断した。ちなみにミリアには今の音は聞こえていない。ただ、何らかの思考性を持った魔力を感知しただけ。
と、なれば、次に考えるのはあの
「みんな!
精霊達に周囲を偵察させていたナルミヤが
「レミナ、私には聞こえなかったんだけど、さっきの奇声の出所はどれ?」
「あれ」
レミナの指し示す先には女魔道士の
「みんな! あの女性魔道士の
「でも、後ろから来る
カイトが懸念を口にするが、
「そっちは俺達が行く。カイト、お前は仲間達と協力してアレを討て」
力強く答えたのは兄のライエルだった。
「結構数が多いみたいだけど、大丈夫?」
「カイト、俺を誰だと思ってるんだ?
自信あふれる声色でカイトにそう告げ、自らの愛用するミスリル製の大剣を片手で振りかざして声を上げた。
「野郎ども! 今こそ俺達の力を見せつける時だ!
行くぞ! 俺に続け!」
うおおおおぉぉぉぉぉ!
男達の雄叫びが遠ざかって行く。それでもやや不安げなカイトに、シルカの母シルヴィアが笑いかける。
「大丈夫。
カイト君はシルカや仲間達とあの
「わ、分かりました!」
「カイト! 始めるわよ!」
「お、おう!」
シルカの呼び声にカイトは1つ返事で仲間達の元へ。それを満足げに眺めるシルヴィア。
「ふふふ、カイト君も随分と逞しくなったわね。
将来の息子としては上々かしら」
シルヴィアがそんな事を呟いていた事は誰も知らない。
そして場面は再びミリア達の元へ。カイトも合流していよいよ戦闘開始。
仲間はミリア、エクリア、リーレの三人娘に加え、アザークラスのカイト、シルカ、ナルミヤ、レイダー、レミナ、ヴィルナの9人。
対する敵は、女性魔道士の
その他にも多数の
よって、数の上ではミリア達の方が有利のように見える。だが、そう上手く行かないのも世の常である。
「先手必勝! 植物には炎よね!
「あ、それは」
火属性の魔力を練り上げるミリア。その後ろでカイトがなにか言いかけたが発動した魔法は止められない。放たれた火炎弾は一直線に女性魔道士の
その次の瞬間、いきなり氷柱が突立ち火炎弾を受け止め水蒸気と化して散った。
「氷の魔法!?」
驚くミリアだが、そんな暇も与えんとばかりに他の
一度距離を取って立て直し。そこへカイトが声を掛けてきた。
「あの
それを聞いてミリアは内心舌打ちする。
四属性揃っていると言う事は、属性によるアドバンテージはほとんど得られないと言う事だ。しかもその奥には全属性の
「お互いに連携を取られると面倒ね。何とか分散させて各個撃破を狙うわよ。ところでカイトはどれが何の属性の魔力持ちか分かるの?」
「え? ミリアは分からないのか?」
「分かんないわよ。魔力の大きさや場所は分かっても、持ってる属性までは分からないわ」
そうよね、とミリアに問いかけられたエクリアとリーレも互いに頷く。この2人はカイトが知る限り、ミリアと同類。学園でもトップクラスの2人だ。その2人にも分からないと言う。
「ニヤリ笑いしてないで、さっさと教えて。
どいつが何の属性持ち?」
ミリアの呆れた声に気を取り直し、カイトは
「四属性が揃っている以上、今のままでは決定打に欠けるのよね。よし、まずは水属性のやつを倒すわ。エクリア、援護よろしく」
「任せなさい!」
ミリアとエクリアがカイトの指し示す青色の魔力、水属性魔力を保持した
ミリアとエクリアの目の前にいる
故に、その特性だからこそ付け入る隙がある。
「突き穿て、岩の槍よ!
ミリアの声と共に地面からミリアの身長ほどもある大きな岩の槍が生み出される。その数5本。内2本がミリアの意に従い一直線に
すると、案の定少し離れた所にいた緑色、風属性魔力の
爆炎と共に旋風の障壁が吹き飛ばされたのは。
その時、
そして――
「
ミリアが指を鳴らすと突き刺さった3番の岩石の槍が一斉に弾け飛び、その衝撃で
これがミリア達の対
即ち、2属性の魔法による時間差攻撃。
ミリアは水属性
「リーレ、次は火属性を狙うわ。私が援護するからリーレが倒して!」
「分かりました!」
リーレが氷の魔法を放つと火属性の
「おっしゃあっ! トドメだぁ!」
気合い一発、レイダーの拳が炸裂。凍結し脆くなった身体はまさに氷が砕け散るが如く粉々になって崩れ落ちた。
水属性と火属性の
「よし、最後は全属性の
「相手は全属性持ち。出し惜しみはしない!」
ミリアは魔力を練り上げる。属性は火、水、風の複合属性。
「受けてみろ!
三色のオーロラが覆い包むようにして
しかし、この全属性
「えっ!?」
ミリアの驚きの声。
それもそのはず。
「3つの属性を同時に!?」
「それなら」
次に動いたのはナルミヤ。地水火風全ての精霊達が
だが、そんな攻撃ですら相手の防御を抜く事が出来なかった。全方位から飛び交う異なる属性の魔法に的確に障壁を張って防いでいる。それもほとんどタイムラグ無しでだ。
何かある。そう思ったミリア達は攻撃をしながら相手の様子を伺う。そして気付いた。あの
つまり、この
「これは属性魔法では倒すのはかなり難しそうね」
エクリアとリーレが揃って綺麗な眉をひそめる。まあ無理なものは仕方がない。
「カイト、シルカ。見せ場は譲るわ」
「ああ、任せてくれ! シルカ、一緒に行くぞ!」
「ええ! 行きましょう!」
ミリアに任されたカイトとシルカ。
カイトは無属性の魔力を剣に込めながら地を蹴って相手に向かい、シルカは
それを察したか、
しかし、それを防いだのはレミナ。
「
ゴウとどこからともなく吹いた一筋の、だがあらゆるものを吹き飛ばす力を秘めた突風が吹いた。それはカイトとシルカを狙った葉の弾丸を吹き飛ばす。しかもそれだけでは終わらなかった。
レミナは言った。『敵の枝葉を』『吹き飛ばす』と。即ちそれは、
突風は瞬く間に
流石にここまでは想定していなかったらしく、レミナ自身も「アレ?」と小首を傾げていた。
とにかく、これで遮るものは何もない。
カイトはすでに
混乱。それが今の
混乱をきたした結果、結局何もできなかったのが現実。まあ、どの属性の障壁を張ろうがカイトの一撃は防げないのだが。
「はあっ!」
気合い一閃。カイトの放った横薙ぎ払いは
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