T田ラチ男に乗って。
たまきみさえ
T田ラチ男のひざに乗って。
T田ラチ男とは、うちの車の名前である。
勘のいい方は、どんな車かお察しかと思う。
夫のM夫くんにとっては、初めて新車で買った車だそうだ。
ラチ男もけっこうトシを取ったので、数年前に買い替えたいとM夫くんは言った。けれど、ちょうどそのタイミングで私が無謀にも免許というものを手に入れてしまったがために、当面の間、ラチ男が私の面倒を見ることになった。
この判断は正解だった。
数カ月のうちに、私はラチ男をほかの人の車にジワジワとめり込ませて、相手を10センチくらい浮き上がらせてしまう事件を起こしたからだ(事故とも言う)。
これについては、そのうち書こうと思う。
そんなこんなもあって、ラチ男はトシな上に満身創痍だ。
アゴが外れそうなのでガムテープで留めてるし、後ろ姿はズボンがちょっとずり下がっていてカッチョ悪い。右のサイドミラーには直す気もないかすり傷がずっとついてるし、運転席の窓は雨漏りがするみたい。
何より、前から見るとアゴがガッツリ凹んでいる。ナンバープレートも半分折れ曲がって見づらい。
これを負わせたのはM夫くんなのだけど、おそらく世間様は私がやったに違いないと思ってるだろうことは想像に難くなく、私はそれが大いに不満だ。
これについても、そのうち書こうと思う。
ガチャッとドアを開けて中に入り、私は今日もこんなT田ラチ男のひざの上に座ってお出かけする。
このエッセイでは、そのひざの上から見たこと、感じたこと、素朴な疑問などを書いていきたいと思う。
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