2 さまよい、と出会う
さまよい、と出会う
ゆらめきがさまよいと出会ったのは、その日の夜のことだった。
うまく寝付くことのできなかったゆらめきは、自分の部屋の中のベットの中で起き上がると、そのまま水を一杯、飲むために自分の部屋を出て、台所にまで向かった。
そのとき、中庭の隣を通るのだけど、その中庭のところに、一人のぼんやりとした、青白い姿をした、『ゆらめきと同い年くらいの女の人』が立っていた。
ゆらめきはその、青白い姿をした女の人を見て、はっとすると、それからすぐにその身を闇の中に隠してから、……あれはさまよいだ、と思った。
……さまよい。
最近、ゆらめきの通っている高校で話題になっている『夜に見る自分そっくりの幽霊』のことだ。
その幽霊のことをみんなは、さまよい、と読んでいた。(誰がそう呼ぶようにしたのかは、誰にもわからなかった。だけどいつの間にか、さまよいは、さまよいと呼ばれるようになった)
ゆらめきはどきどきしながら、そのさまよいの姿を闇の中から観察していた。
もう、寝付くどころではなかった。
ゆらめきそっくりのさまよいは、白い月明かりの下で、中庭に立ち、そこで『なにかを探している』ように見えた。
……さまよいの探しているものはなんだろう?
そんなことを闇の中でゆらめきは思った。
すると、ふと、そうしてなにかを探していたさまよいの動きがぴたっと止まった。そして、それから数秒の間、じっとしていたさまよいは、ばっと! いきなり、ゆらめきが隠れている闇のほうにその顔を向けた。
ゆらめきは目を大きく見開いて驚いた。
そのさまよいは、……確かに『ゆらめきの顔』をしていた。憎しみで歪んだような、怒りと悲しみで、心が狂ってしまったかのような、そんな悪魔のような顔をさまよいはしていた。
(そんな自分の顔を見るのは、ゆらめきは初めてだった)
『……見つけた』
さまよいは言った。
そしてさまよいは、中庭の中をとてつもない速さで駆け出すと、あっという間にゆらめきの隠れている闇の中にまで、やってきた。
ゆらめきは震えていて、逃げることもできない。
そのさまよいの冷たい手が、(それは本当に氷のように冷たかった)ゆらめきの腕を確かに掴んだ。
殺される。ゆらめきは思った。
その瞬間、ゆらめきは、気を失った。……そして、眼が覚めると、ゆらめきは、いつもの自分のベットの中にいた。
……外が明るい。時刻は、いつの間にか、もう朝になっていた。
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