影人くんの友達作り。

伊豆村 納

プロローグ

プロローグ 〜その1〜


俺は普通の高校生、薄井影人。いつものように登校して退屈な毎日を過ごしている。


漫画やラノベのような可愛い妹なんていないし、幼馴染なんてできやしない。ただの普通......っていうのは嘘でした。友達いませんでした。


いつも1人だけど、イジメは起きない。(影が薄くて気づかれない。いや、出席簿には載ってるよ?大丈夫だよ?大丈夫だから!)なので、家に帰りさえすれば暇つぶしなんていくらでもできる。だから、友達なんて......


「......欲しいよ!友達!カラオケに行ったりして遊んだりしたいよ!」


俺は友達がいない事を開き直ったりできる人間じゃないんだ!だから、本当に友達が欲しい!


まぁ、自分から話しかけることがないから、相手から来ないと話さないけど。


クラスのオタク共と話してみようかな....と、頭の中で思っても行動に移すことはないな。


俺は人と話すのが苦手なんだ。というか喋れないんだ......


まぁ、家だったら喋れるんだけどな。あと、人がいなければよく独り言で......


....だが!今日こそ誰かと——






話す機会は特になく、何事もなく一日が終わりそう。というか今、下校中......


「......寄り道してみるか。1人で」


1人寂しく行ったことのない本屋で、面白い漫画やラノベがないか探してみる。


......ん?なんだ?100円コーナー?


中古でも色々あるだろうと本がいっぱい入っているダンボールに手を伸ばしてみる。


わかりきってはいたが、傷だらけのものばかり。


だけど、一冊綺麗で厨二病魂を擽る、魔法陣のようなものが描かれている本を見つけた。


「......この本、なんだ?ひ....開かねぇ」


無理やり開けようとしてもビクともしない。俺の握力がないとでも言いたいのか?


まぁ、運動してないけどさ。全部のりとかで紙を貼り付けたとか?


店員にどういうことか聞こうとしたが、そんな事はできない。


意地でも開けてやろうと思い、仕方なく買ってから親に開けてもらおうと、100円を払って家に帰った。






家に帰ると、母が夕飯の支度をしている。父は、仕事で夜まで帰ってこない。


......よし。


「母さん、この本、開けてくれない?なんか俺の握力じゃ開かないみたいでさ......」


「....はい?いきなり何言っているの?まるで私の握力が影人より強いとでも言いたいの?」


「そうでしょ。だっていつも父さんの顔を....待って、包丁を人に向けるのは、良くないというか何というか——」


「何を言ってるのやら。いつもこんなに元気に話せれば友達ぐらいできるはずなのに......」


「いや、家と外界とでは、安心感というものがあってですねやっぱ——」


「これを開ければいいのね」


「....はい」


母さんは、俺と同じく無理やり開けようとしたが、やはりビクともしない。


「これ、何で、開かないのよ......」


「母さんでも無理か....。もういいよ、母さん」


「本当に?包丁で紙と紙の間を切っても良かったんだけど......」


「夕飯が楽しみだなぁ」


そう言って本を回収し、自分の部屋に逃げるように入った。


包丁を持った母さんが怖い!


しかし、なんで開かないんだ?


....まぁ、どうでもいいか。母さんでも開かなかったんだし、のりが固まり過ぎたとか、そんな感じだろ。


途中まで読んでたラノベを読むか。勉強は....今日はいいや。


そして、机に本を置いてラノベを読み始めた。






......結構、時間が経ったな。風呂入って、飯食べるか。






夜飯を食べて、風呂に入った。


特に何もなく。


風呂から上がって、パジャマに着替えてベッドに入った。


「....寝よ」


結局、今日も普通....な日だったな。


「......」


『....お......い』


「......?」


『おい』


「....は?」

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