第4話 どんな音が好き?
朝、起きると目の前がチカチカした。
きらきらした粒子が雪のように辺りに舞って、その中に微かに発行する小さなひまわりが、いくつも浮かんでいた。
「ほわぁ……きれいッ」
この音はどこから来ているのだろう。ベッドを出てから、ここが自宅ではなく
「あ、おはよう智絵」
「流歌お姉ちゃんおはよ……いつも早いね?」
「
六連家には智絵を含めて六人姉妹がいる。上から、
「智絵はカフェオレでいいかな?」
「うん……」
「どうかした? またなにか音が見えているのかしら?」
「そ、そうなのッ!」
「はいはい、慌てないでいいから」
流歌はのんびりしているようで、的確なところをついてくる。みんなのことをよく見ている。少し温めたカフェオレを智絵の前に置いて、なにが見えているのか聞いてきた。
「あのねっ、金色にきらきらしてて、花びらが見えるの! ひまわりみたいなお花なのっ!」
「へぇ、ひまわり。夏らしくてなんだかいいわねぇ」
「お姉ちゃんたちも見えたらいいのに」
音に色がついて見えるようになったのは、いつだったかよく覚えていない。俗に言う【サウンド・カラー共感覚】だ。でも、綺麗だったから良しとした。それに、いろんな形が出てくる。カラフルな音符やハートは、いつも智絵の周りをくるくると回って周りを明るくした。たまにウサギだったり、猫だったりが跳んだり跳ねたりしている。
キッチンにカップを置いて、またくるくると家の中を回る。きらり、とまたどこかから音が聞こえた。
ふわっと金色の花弁が風に吹かれていた。風が吹いている方に視線を向けると、音の正体にようやくたどり着いた。
縁側につり下げられている風鈴だ。風で揺れる度に、そこから金色の粒子とひまわりの花弁がちらちらと降ってくる。それが風に乗って、辺りに散っているのだ。
「キミだったのね?」
ひまわりの絵柄の、艶やかな風鈴はまた「ちりり」と鳴らして「おはよう」と言っているみたいに花弁を散らした。
「ふふっ、おはよっ」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
夜になって、今度は金魚が泳いでいた。赤と白の綺麗な尾ひれが、真夢と里桜と一緒にテレビを見ていた智絵の目の前を、ふんわりと遮った。それを目で追っていると、真夢が「また何か見えた~?」と頭を撫でてくる。
「金魚が見えたの」
すると里桜が「またそりゃ珍しいものが見えたもんだねぇ」と夏用のカーペットの上に、まるで猫みたいにごろんと寝転がった。
もしやとその金魚の後を追ってみると、案の定、あの風鈴が吊ってあるところに戻っていった。
金魚の絵柄の風鈴が、ちりり、と鳴った。その度に風鈴から小さな金魚が ぽんっ と出てきて泳ぎ始めるのだ。
「ちーえー」と流歌の呼ぶ声が聞こえた。
「智絵~、お茶にしよ~」
「あ、はーいっ」
金魚が目の前をまたひらりと翻って、風鈴を出たり入ったりしていた。
「ふふっ、金魚さんおやすみ」
終わりと始まりのグラスグリーティング
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます