2021/02/24 0:18 鷦鷯飛蝗

糸杉の君が

温度計の無い夜

死にながら立ってる

零下三度の海原は

自分たちの立てる浪で凍るから

潮風を避けてこんな山奥まで

針金で肌に縫い付けられた

麻のシャツを脱ごうとして躓く



黒ずんだ背高のっぽの死骸は

僕の膝より実は低くて

ただそこに立ちながら

虚ろに帰属している



乾いた、冷たい風の中を泳ぐように呼吸する

星座を描けないくらい茫洋とした乱視の世界を

共有できないと嘆く全ての相手がもう

どこにもいない

滲んだ光は点から十二角形の模様になって

未だにそれは涙のせいじゃない

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