2020/06/17 19:25/鷦鷯飛蝗

あの日鏡に映ったこの顔が

あんなに幼く見えたのは

ただ過去を思い出したから

記憶の錆を剥がしたから

若返れはしないのなら

顔だけじゃ笑えないのなら

夕暮れも見ないで転げてる

痩せた踝を突いてみよう


世界、愛してますよ、なんてあなたは言って

私はあなたに対する世界の愛の

濃度的な偏りなのだとか

あなたは私を愛していなくて

私を含む世界を愛しているらしい

そんな人と生きる日常は

雲のようだったけど

縁石の斑な染みのことだって忘れてなかった


日が落ちて、潰れていく視界の怖さも切なさも

電柱たちが踊り出してしまったのに比べれば

空が紙を一枚被せただけの書割に見えるようなものだ

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