2020/04/27 14:54/鷦鷯飛蝗

この許されたがりを

やめなければならない

叱られているときに

宙を泳ぐこの目の

小煩い瞬きを

忘れてはならない

ふらふら移り変わる重心の位置を

縫い止めたときのかなしみを

思い出さなくてはならない

あの生唾の味を

忘れられるわけがないのだから


そうまでして守ろうとした

もう形も思い出せやしない

あの不恰好な繭を

貶めてはいけない

今その胸に残骸を抱いていることすら

見てみぬふりをしてはならない

自分の喉を震わせた知らない声を

忘れてはならない

受け止めきれなかった足取りを

逃げたと断じられることを

拒むことはできない


肩が外れるくらいに脱力しきった両腕を

繋げ戻すにはまだ早い

まだ早いのだ

鼻の奥に

アンモニア臭を括り付けて

きっと今度は殴り倒せ

そういう覚悟で屋台骨を潰せ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る