2019/06/27 19:49/鷦鷯飛蝗

水を吸いきった服に包まれて

体温は不快感を加速させるばかり、まるで乾かない

遠く、いつも見える山は

無数に引かれた縦縞に白くされて

空気は重く


蝶も飛び立てないまま

思うようにならないから

ならないまま

湿って


足下、いつも涸れている溝は

勢いよく流れる濁流で汚くたされて

気分は重く


雨は何も押し流してなどくれない

ただ腐臭と、鈍重な大気と、陰鬱とした気分だけを積み上げて


夢を思い出した

祖母と弟と逃げていた

何から逃げているのかは教えてもらえなかった


そういう風に今も歩いている

撥水なんて大嘘

染み込むままに濡れそぼち

手先を震わせながら

今も歩いている

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る