詩送り

2019/06/23 20:29/鷦鷯飛蝗

腐りそうだから頭を揺らした

人いきれ、混ざらないから

膿んだ卵から生まれてきたんだってさ

煮汁が渇いてこびりついたままの鍋

降り下ろして、何度も

この能面はなんだ

生きていたのに

今だって変わらない

そのままの身の上で

ひそめよ

見上げちゃだめだ

滑り落ちたままでいよう

裂いていないなら許される

銜え殺して捉えて果てろ

糧も無く

配線、絡み合うにまかせて

概念、解れ合うにかまけて

雷、磊、籟……

ほどけそうだから心に蓋した

くだらないまま、熔けておけばいい

饐えた子宮から生まれてきたんだってさ

血肉がわかちがたく抱き合ったままの胞衣（えな）

酌み交わして、何杯（なんど）も

この傲慢はなんだ

死んでいたのに

いつになっても変わらない

このままの口癖で

いどめよ

見捨てちゃだめだ

届けかねたままでいよう

泣いていないから赦される

悶え颪て踏まえて消えろ

宛も無く

疥癬、掻き毟るにまかせて

賽銭、注がれるにまかせて

まだだよ、まだだから……

零れそうだから器に戻した

終わらないまま、冷めていけばいい

暮れた空から溢れてきたんだってさ

毛と脂粘りついて剥がれないままの排水溝

打ち合わせて、何合（なんど）も

解、怪、壊……

鈍くぬらぬら照って

光らないよ、光らないまま

どこまでも沈んでいけ

落ち着けるところまで

茹だり切ったそいつを妬（灼）いていけ