2019/05/22 18:51/鷦鷯飛蝗
猫は居なくなっていた
そもそもどの街路樹の影か、覚えてもいなかった
その代わりあの猫と同じ若草色がコンクリートを必死に突き破っていた
実際俺も、最初はあれを下草だと思っていたのだ
もしかしたらただ雑草だったのかもしれない
今となってはわからない
ただ、竹に鶯が鳴いている
枯れた川の岸で
描き割りのグラデーションに向かって
滑らかな声で問いかけている
来し方を忘れて、耳元を通り過ぎた蜂の音に身を竦める
謎になってあの猫は俺に住み着いたのだ
ああしてやつは延命を果たした
或いは誕生を
そうしていつまで俺の中に居るのだろう
多分ずっと消えない
十の時分にみた奴もそうだった
そういう、どうしようもない話だ
人知れず身を尽くして他人の夢を摘む君に
どうしても届けなければならなかった話だ
それでも君はあきらめないけど
俺にはどうにも無理して見える
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