僕は見送った……
ケルベロス
序章 施設
第1話 お母さん、お父さん
五歳の少年が父親に腹を蹴られていた。
「お父さん、止めてよ」少年の悲痛の叫びは、癇癪を起こしている父親には、届いてはいない。
母親はその光景を見ながら、タバコをうまそうにふきだしていた。
父親の気がすむと、暴力が止む。
「あなた、何処に行くの?」
「パチンコ」
勢いよく玄関が閉まる。
少年は、殴られた腹をおさえながら、号泣した。
母親は「うるさい!!」と、少年の顔をまるでサッカーボールかのように蹴る。
少年の心はもう、ボロボロだった。
母親は、浮気相手に電話をかけ、晴れやかな笑声をもらす。
そして、母親も家を出た。
少年は、嗚咽をもらしながらも、立ち上がり、怯えながら家を出る。
誰か助けてほしい。出ていったことがバレたらまた殴られる。
町のすべてが赤っぽくなった。それでも少年は歩く。誰かに助けてほしいから。
「ちょっと、僕?」
少年は振り返ってみる。そこに立っていたのは温厚そうなおばさんだ。
「大丈夫なの?」おばさんは、少年の体に触れようとするが、少年がそれに一瞬怯えた。
それに感づき、少年の袖をめくる。甘酸っぱい臭いを感じながら、あざを確認した。
「ちょっと家においで」少年を家に招き入れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます