銅の処女作

エリー.ファー

銅の処女作

 マヨネーズって、何にかけても美味しいじゃん。

 絶対美味しいじゃん。

 絶対に、俺は間違いのない真理だと思うんだよ。

 俺は。

 なのにさ。あいつは、言う訳よ。そんなわけないって。マヨネーズがどうこうじゃなくて、そもそもそれって食材が美味いとかそういう話なんじゃないのかって。

 分かってないよな。

 違うんだよ。

 凄いのは、マヨネーズなんだよ。

 だって、よく考えてみろよ。あの、ただ茹でただけのブロッコリーに何をかけるんだよ。塩か、それともケチャップか、ポン酢か。

 違うだろ。

 マヨネーズだろ。

 マヨネーズを越える調味料がないことなんて百も承知なのに、なんでみんなそこんところを理解できないんだよ。

 あのブロッコリーを配下に加えられるのは、そうそういないって。あの、緑で、ぼわってなってるブロッコリーだぞ。そうそう他の調味料に迎合する人じゃねぇって、思わねぇか。あり得ねぇだろ、そういうの。

 分かりきったことだろ、それくらいは。

 だってさ、ブロッコリーって、さ。まぁ、ここだけの話にしておいてくれるならあれなんだけどさ。うん、あの、そのさ。

 あいつの兄ちゃん、めっちゃ頭良かったじゃん。

 うん。

 そう、ブロッコリーの兄貴、すげぇ頭良かっただろ。ていうか、俺たちも教えてもらってたじゃん。勉強できないときとか。そりゃ、なんか弱々しい感じだったし、喧嘩も強くなかったから、俺たちの中の、そういうランクの中には入ってなかったけど。

 実際、身近な年上で一番まともで、尊敬できたのって、あのブロッコリーの兄貴だったじゃん。

 でさ。

 ほら、県外の高校に通うことになったじゃん。頭いいから、いい大学行くなら、ここらあたりの高校なんて、行ったってしょうがないって、そういうことになってさ。

 で。

 今、どうしてるか知ってるか。

 家で引き籠ってるんだってよ。

 なんか、その高校でいじめにあっちまったみたいで。可哀そうだよな。なんか、色々よくしてもらったのに、力になれなかったなぁ、みたいな。

 で、それからブロッコリーのやつ、おかしくなったんだよ。兄貴がこういう感じになって、弟の俺が何で守れなかったんだろうって、なんで、何にも考えずに、頑張れ兄貴とか言っちまったんだろうって。

 ちょっと荒れてたじゃん。

 そこに、だよ。

 マヨネーズさんがさ。

 直ぐ、近寄って、何かやってやったんだろうな。

 うん。

 あくが抜けてさ、ほんと、丸くなったよ。

 あいつも。

 マヨネーズさんも最初の内は凄い傷とか追ってて大丈夫かなぁとは、思ってたんだけどさ。手出しはするなって、そういう感じで。

 そこのところは、マヨネーズだけに、粘り強く細く長くって。そう言っててさ。

 いやぁ、あんときはしびれたぜ。

 うん。

 他にも、ほら西高のゆで卵とかも、直ぐに配下に収めたし。

 ほら、東高のトマトとキャベツも直ぐに和解させたんだぜ。

 まぁ、確かに、プリンは、なんていうか、そのパワープレーもいいとこだったけどよ。まぁ、量でいけば、ほら、なんとかなるし。

 てか。

 マジ、マヨネーズさん神だわ。

 だからさ、お前、さすがに地元帰ってきたら、挨拶しといた方が良いって。

 マヨネーズさんはガチだから。

 ほんと、マヨネーズさんは、マジのガチだから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

銅の処女作 エリー.ファー @eri-far-

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ