Rainy day
ビターラビット
Rainy day
雨の日のプラットホーム
ポツ、ポツ、…と空から溢れ落ちてくる雨粒が、七色に染まって見えた
少し長く伸びた前髪は、雨粒をつけて煌めきながらゆさゆさと揺れ動く、まるで僕の心を象徴するかのようだ。
僕は出会う
雨の日にしか出会えないもう一人の自分に
「やあ、元気かい?」
「やあ、元気だよ」
目だけでお互いに会話をして、僕は駅に到着した電車に乗り、目的地に向かう。
電車は水面上の平行世界を進む進む
僕一人を乗せた電車は、まるでゆりかごのように僕の心も体を揺らす
カタン、コトン、カタン、コトン、…
そんな音が僕の心に響き渡る。
天と地が煌めく、朝が来て、夜が来て、春が来て、秋が来る。
そんな彩られた世界で、僕は生まれ、出会って、別れていく
大切な人、大切な友、大切なもの、…
そして僕は目的地で見つけた
この美しい世界全てのような、そんな美しい瞳をした彼に
少しの時間だが、僕らはベンチの上で他愛ない会話をして過ごした。
好きな食べ物、好きな事、好きな遊び、…
まるで互いに答え合わせをするような感覚で、僕達は沢山話し合った。
時間は僕らを乗せて、静かに、しかし着実に進んで行く
ふと顔を上げて地平線上を見れば、太陽が傾いていた。
別れが近い事を僕らは自然と悟る。
「ねぇ、君はどこまで行くの?」
「僕は…分からない。でも、ここではない。そんな気がするんだ。もっともっと遠くまで行ったら、もっともっと美しい世界がある気が…ねぇ、君はどこまで行くの?」
「僕は…」
「この世界の端っこにはね、大きな崖があるんだって、世界と世界を隔てる底知れぬ崖が…僕は、多分、そこまで行けば、何か見つけられる気がするんだ。本当の…」
「何も…ないかもしれないよ?」
気がつくと、僕は自然とそんな言葉を言っていた。
どっからそんな言葉が出てきたんだろう?
自分でもびっくりして慌てて口を覆い隠した。そして彼の美しい瞳が一瞬曇る。
「そうかも…しれないね。でも、僕は行ってみたいんだ。この世界の端っこって、どんなとこか、隣の世界はどんな世界か、きっと僕は自分の目で見てみたいんだ。ねぇ、良ければ君もどう?」
その言葉を聞いた瞬間、そう投げかけられた瞬間、僕の世界が見たことがないほど鮮やかに煌めき始めた気がした。
「僕も…」
その手を取ろうとした。だが、急に頭に警報音がなり響く
"行ってはいけない、君の世界はここだよ"
そう誰かに言われたような気がした。
「そっか…じゃあ僕は行くよ」
彼はそう言って立ち上がると僕の目の前に片手を差し出した。僕も釣られて手を差し出し、互いに笑顔で握手を交わした。
そして僕らは別れた。
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