瓶の中で生きた小さなザリガニの話

つきの

第1話 白玉

 僕は白いザリガニだ。

 雑貨店の片隅で小さな瓶に入って売られていた。


 周りには同じような仲間達が何匹か。

 とはいっても瓶越しに見ることができるだけ。

 元気いっぱいで動き回っている奴もいたけど、中にはぐったりしてほとんど動かない奴もいた。


 瓶の中には専用の水が少しに、つかまることができる細い流木。

 食べ物は専用の物が小箱に入って瓶の横に並べてあった。


 ある日、いつもの如く瓶の外を眺めていると、一人の女の人が僕の入った瓶を手に取った。

 じっと見られて落ち着かずに僕はドキドキした。

「すみません、この白いザリガニは瓶の中で育てられるのですか?」

「餌は何をあげたらいいんでしょうか」

 女の人はお店の人に熱心に聞いていた。


「そうですねぇ、そのままでも大丈夫と書いてはありますが、慣れてきたら少し大きめの入れ物に替えた方かいいかもしれませんね」

「餌はほら、この横に置いてある専用のを食べさせるといいですよ」


 色々と熱心に聞いていた彼女は意を決したように僕の瓶を手に取った。


「じゃあ、お願いします」

 瓶の中から彼女の柔らかそうな掌が見えた。


「本当に透き通ったような綺麗な白なのねぇ」

「そうだ、あなたの名前は白玉しらたま、白玉ちゃんにしましょう」


 これが、僕、『 白玉』と彼女、けいさんの出会いだった。

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