31番目のお妃様
桃巴/ビーズログ文庫
1 天空の孤島領から後宮へ(1)
「喜べ、フェリア! お前は王様のお
フェリアは
「兄さん、また飲んでいるのね」
バッシャーン
勢いよく桶の水をかけられた熊男は、ブルンと体を
「やめてよ、兄さん!」
水滴の
「酒は飲んでねえぞ。お前は王様のお妃様になれるんだ!」
「うんうん、わかったから。まず、熱いお茶でも飲んで頭を覚まそうね。ほんと、手間のかかる
やれやれとも言わんばかりに、フェリアは台所に
それを追うように大兄ことリカッロはついていった。
「でな、フェリア、お前は王様のお妃様になれるんだ!」
台所でも、リカッロは大声を響かせる。
フェリアは
「リカッロ兄さん、王様のお妃様は
ドカッと
今夜は月に一度の
フェリアの兄リカッロは、カロディア領主である。三年前に事故で
「ふふぁあ、リカッロ兄さん……声が大きいって」
台所に現れた背が高い男は、水が入った桶にボサボサの頭を
「やめてよ、ガロン兄さん!」
フェリアはまたも
水滴が頭に残るガロンは、深夜の薬草畑守りを昨晩こなしていた。そのため昼間に
カロディア領の深い森には、薬草畑を
そんなカロディア領で、いくら何でも王様のお妃様の
「リカッロ兄さん、会合で何かあったんだろ?」
ブツブツ言いながらお茶を
「ああ、フェリアを31番目のお妃様にと
とたん、フェリアとガロンは飲みかけたお茶を、リカッロの顔めがけて
「なんだよ! 二人とも
「マジな話だったのかよ」
隣の
ガロンは
フェリアは見開いた目がかたまり、一種のホラー顔になっている。
「ああ、ほら……31番目のお妃様ってなかなか決まらねえだろ。31番目は最下位のお妃様だからって、お貴族様らは娘を出さねえ。一番下っぱ
シーンと静まる台所。
確かに二十二を過ぎたフェリアは
フェリアはゴツンとテーブルに頭をぶつけ
「まあ、一年のお勤めだ。楽しんできたらいい」
リカッロは能天気に発した。
「ああ、まあそうだよなあ。どうせ王様は上位の妃しか相手にしねえだろうし、夜のお
ガロンはちゃんと椅子に座り直し、隣で突っ伏しているフェリアの頭を
「お前、昔さ、『王子様が
ガロンとは対照的に
「いつの話をしてるのよ!」
フェリアはガバリと起き上がり、能天気なリカッロを指さした。幼女の
「ここの男どもには、ぜーんぶ断られたんだ。王都に行けばお前を
リカッロのその言葉が、フェリアの
「王様のお妃様になるのに、男
リカッロの耳をむんずと
31番目のお妃フェリアは、こうして召し上げられることとなったのだ。
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