怪奇
西田 正歩
第1話供養人形
指切り元万を親戚の由美ちゃんとしたのは幼稚園を卒業する近くだった。
それからまもなくのことだ。ダンプカーの前輪に体と顔を潰され、酷い遺体になってしまっていた。余りの酷さに葬式に出したのは人形であり、遺体はもう葬式の時には灰になっていた。小さい子どもではあったが、あの箱に入っているのは単なる人形なのだ。
その後、供養され灰になったのだが、焼け跡から少しばかり残る人形の欠片さえ見付からず、不思議がっていた。
あれから中学生になった私は、ある雑誌に読者モデルとして載った。
まさか、晴れて雑誌に私が写ることになるとは、嬉しかった。
由美ちゃんが雑誌に載ってるモデルになってみんなに見てもらうと想いを考えついた。
そして、私は由美ちゃんの写真を撮ってあげると約束して指切りしたのだ。
私はそれから、専属で雑誌に載ることができた。ある日、撮影が終わり帰ろうとすると、さっきまでいたはずのスタッフが全員いなくなっていた。
私は怖くなり、ドアを開けようとしたが、ロックされ開かない、すると私と同じぐらいの少女が背後から呼びかけた。「あなたもここに閉じ込められたの?」少女は、ニッコリ笑っていた。
「あなたも?」
「そうなのよ、いつの間にか寝てたのか、スタッフ消えているの」
私は、その少女に目移りしてしまう。女性の私が変になるくらいの美しい姿、それも美しい着物であった。
何故か知らない、ただ始めに出た言葉が
「あなたを撮って良い?」
バカな発言だと笑うだろうが、それでも撮りたかった。
「いいよ、あみちゃんなら大歓迎」
「ありがとう」
私は、置かれてあったカメラを使い撮り始めた。
フッと気づかれた方もいるだろう。あみちゃんと彼女の名を着物少女は、知っていたのだ。
ふわりと世界が揺れ、私は倒れた。
気がつくと、カメラ持って倒れている私をスタッフがたたせてくれた。
それから、いきさつを話すが、夢だと信じてくれない。
あのカメラを原像したところ、写真に写っていたのは、小さい日本人形であった。
よく見ると、着物が死に装束の形になっていた。あの人形は、あの日事故で死んでしまった。由美ちゃんの供養された人形であったのだ。未練が残り、今でもさ迷っていたが、私が読者モデルになって、彼女も撮りたくなり、出てきたのだろうか、あの日の指切りが繋ぎ会わせたのかも知れない。
完
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