VS GOD

「どうでも良い事をベラベラと…」


そんな時反則がやや声を低めて唱えるように呟いた。

この状況ではたしかにどうでも良い事かもしれない。

しかし反則の「どうでもいい」は極めて「重大」だった!


「戯言はお終いだ、お前ら邪魔者はセキュリティの力を借りるまでもない、俺一人で充分だ!」



すると反則の体がまばゆい光に包まれた。


「こ、これは…」


ユズルは襲いかかる光から目を守るように手で覆う。


「反則さん!自らの体にMT細胞を!」

「MT細胞??」


MT(ミューテーション)、親、あるいは遺伝された細胞とは別の細胞を取り組む事により自らの体を進化、神化させる細胞のことで、異締テクノロジーの開発した究極の科学製品である。



「でも、あれを使ったら…」


そう、MT細胞を使うのは大きな副作用があった。


副作用とは寿命が極端に減り、悪性新生物までも取り組んでしまうリスクが現状のところあり、危険な賭けでもある。



その代わり肉体は強化され、あらゆる超能力を身につけてしまうので前線の兵士にそれを挿入して駆り出す事例が最近のニュースで流行っている。



それを反則という社長の御曹司自らが…。

一体異締家は何を考えているのだろうか。



反則から放たれる光が止んだ後、反則の背には六枚の白く大きな翼が生え、破けた服から見せる体には見事な筋肉、

そして髪は美しい白銀の羽毛をこしらえ、

まるで神のような神々しい姿となってユズル達の前に立ちはだかった。



「GOD反則!この我に勝てるかな?」


GOD反則となった反則は両手を広げて高らかに笑った。


「くそっ、いじめっ子の癖に何で大天使の姿だ!お前のような奴悪魔がお似合いだ!」


ユズルは何故か大天使の姿になっている反則にルサンチマンを覚えたのか、怒気を表す。


「知っているかね?天使こそ宇宙界において最も残虐な生き物なのだよ!」


反則は澄まし顔になる。


「確かに…神に従順な者だけを残す為に大洪水を起こしそれ以外の者達を全滅に至らしめたのも天使ですね…」


ユイは顔をしかめる。


「詳しいなお嬢さん、その通り!天使は残虐で気高い!世を守り、最善を保つためには残虐な事をする事も厭わないのさ!」



反則は更にまばゆい光を体から放つ。



「くそっ、神だろうが何だろうが俺には神の宿った聖剣がついている!お前なんかに負けない!」



ユズルは聖剣を構えて反則を力強く睨む。


『ユズルはん、悪いけどこの男、えげつないわ、わいでは勝たれへんかも知れへん…』


一方の聖剣アレンは珍しく弱気になっている。


「何弱気になってんです!貴方はギリシャ神話の戦の神でしょう!しっかりしなさいな!!」


ユズルは叱咤をかける。


「ユズルさん、反則さんには聖なる力が宿っています、聖なる力に対抗するにはそれと対なる力…」


ユイはGOD反則に聖なる力が宿っている事からそれに対なる力が必要だとフォローを入れる。



「対なる力…それは何なんだ!?」


RPGにおいて、勇者には必ず聖なる力が宿り、それに対する存在の魔王には闇の力が宿るのがセオリー。


今対峙している反則は残念ながら強大な聖なる力が宿されており、それに対抗する闇の力を持つ存在がパーティの中には存在しない。



そう思われた。


「ユズルさん、ミーの言ってた事、覚えていますか?」

「え、何のこと?」


ユイがユズルに言った言葉、それがヒントに繋がるらしいがそれが何なのか今のユズルには理解に難しい。



『え、何のことかいなお嬢はん?』


アレンもわからないでいる。


「ミーは言いました、ユズルさん、自信を持って良いと!」


「自信…はっ、そうか!」


「この小娘!これ以上好き勝手喋るな!!」


すると反則は怒気、本性を現し、口から光の閃光を発してユイらを焼き尽くそうとする。



『危ない!!』


そこでアレンがバリアーを張ってユズルらを守る。


(危ない、アレンさんがいなかったら僕らも無事じゃなかった…)


ユズルもさっきの閃光でアレンがいる事をつくづく有り難く思った。


お調子者で一言多いのが無ければ…。


「ちいっ」


反則は舌打ちする。


「気づきましたか?」とユイ。

「気づいたけど…あまり有難くない気分だな…」と複雑そうな気持ちになるユズル。



「しかし、光には闇が必要なのです、光のみだと、眩しくて何も見えなくなる…」


「しかし、どうして僕が「闇」なんだい?」


ユズルに宿る闇の力、それが何故ごく普通の男性であるユズルに宿っているのか?それが疑問だ。


「闇の力…それは疎まれオーラ…貴方は身に覚えがあるはずです、決して貶しているわけではありませんが…温度差を感じた事は無いですか?」


とユイ。

ありまくりだ、母親以外では、外へ出ても周囲と自身の違いを明らかに感じ、疎外感が半端なかった。


「闇は生まれついて備わるものではありません、いじめだったり、独りである期間が多ければ多いほど闇は蓄積してしまうものです…」


ユイは静かにこう諭した。


『そんな!ほなわいも「闇」なんか!?わいも嫌われポジションにおったから!』


ユズルの持つ聖剣アレンはあたふたしてユイに聞きだす、そんなに俺と同ポジションが嫌なのか…。


「いえ、アレンさんに闇の力は感じません、戦神アレンと言えば確かに嫌われポジションのようでしたが戦神アレンに憧れる人も沢山いたはずです」


『そ、そうかっ、ホッ♪』


それを聞いて安心するアレン、くっそ後で死んでやるから覚えてろよ!


「それじゃユイさんも少なからず闇属性はついてるはずじゃ…いじめられてたんでしょ?」


ユズルは自分自身をどうしても庇いたい思いでユイに聞きだす。


「闇属性持ってるように見えますか?」


ふと黒いオーラを発して影成分の多い表情で睨んでくるユイ。


「な、何でもありません…」


ユイのいつも見ない凄みに怯みユズルは弱々しく引っ込んだ。


「冗談です♪確かに私は支えてくれる方がいなければユズルさんのように堕ちてたはずでした、しかし私は支えてくれた方がいて、そして多くの読者から人気を独占して他の登場キャラに申し訳なく思っていた程ですから…」


最後の方メタな事を言ってたがいじめられた経験はあるにせよ支えてくれた友と読者からの励ましで闇属性が蓄積されるのは免れたようだった。


しかし闇属性を持ってしまってる事がユズルにとって辛かった。

しかし目の前の「聖」属性に対抗するのには自分の力も必要と自分に言い聞かせることにした。


「グヌヌ…しかし貴様らは重大な事を忘れている!確かに闇属性は光に対して強大な威力を発揮する、しかし、逆もまた然りなのだよ!!」


反則は光と闇は表裏一体だと説いた。


「わかっています、しかし今のユズルさんは独りじゃない!光によって闇が呑まれても私達が引きずり出してみせます!」


とユイ。


『ほうやでユズル!確かにあんさんは頼り無あて嫌われ者オーラ半端ないけどわいらもおるしそこの胡散臭い大天使よりマシやから大船乗った気でおりぃや!!』


一言余計な事を言った気もするがアレンもユズルを励ます。

何というか自分が闇属性で無い事に安心して調子付いているように見える。


「くっそ自分が闇属性で無いからって!」


ユズルはかえって不機嫌だがユイは助け舟を出してくれた。


「ユズルさん!反則の聖なる力には貴方の闇の力が必要です!人には必要になる時があるはずです、今がその時、共に反則を倒して世界に平和を取り戻しましょう!」


ユイさんは本当に天使のような存在だ、今対峙している「天使とやら」ではなく。


そして俺は聖剣アレンを構えて、ユイさんはハリセンを構えて強敵反則と戦う!

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