ユイと言う少女
「愛してんぜ、愛してんぜ!」
金髪の美しい青年が黒髪の美しい青年を抱いている。
いや調教していると言った表現が正しいようだ。
「はぁはぁ、女ばっかりで良いと思ってたけど男のお前もそそるぜ、良い声で泣きやがって!」
金髪の男は反則、黒髪は坂丸である。
二人は対等でライバル関係だったがユズルとの戦いで精神をやられた坂丸は異締コンツェルンの父、異締仕葉にたぶらかされ、繁華街で裸になる。
それがきっかけで警官の資格を剥奪され、異締家に「飼われる」事に。
雇うというには扱いが粗雑、それもそのはず、坂丸は気が触れている上に元々敵の立場だからだ。
今の坂丸は男達の性処理や溝掃除係にさせられている。
反則は坂丸の棒やピンクにいたるまで、硬くなったところを責めている。
「ご主人様…私も貴方が好きです♪」
坂丸は感じながらそう微笑み、反則と口づけをする。
「ふふ、好きか、そうか……」
反則は坂丸を見てふと体を止めて微笑を浮かべる。
そして両手を坂丸の首にもっていった。
「ふざけるな!!」
反則は突然血相を変える。
「俺は貴様が嫌いだ!殺したくなるくらいにな!そもそも男同士でこんな事やってるのが間違いなんだよ!!」
「く………はっ………」
坂丸はもがき反則の締められた手に手を掴んで命の危険を悟る。
坂丸の目には反則の顔が金髪の鬼のように見えた。
しばらくして反則は手の力を緩める。
「ゴホ!ゴホ!」
咳き込み吐き気さえ催す坂丸。
そして反則は再び優しい顔に戻る。
「安心して、殺しはしないよ、君はここに必要な子なんだ……」
(この人は本当は優しい人なんだ…)
反則のマインドコントロールに見事に嵌る坂丸。
「苦しかったかい?ごめんよ、俺、どうかしてたよ……」
そう言って反則は泣きかけになる。
「ご主人様…泣かないで、俺、もっとご主人様に奉仕しますから!」
坂丸はこうした反則を優しく抱き、宥めた。
(この人は俺がいないといけない!)
坂丸はそう元ライバル、そして現主人の反則に対して思った。
反則はそのきめ細かいベビーフェイスで坂丸を見つめる。今の坂丸は恋する乙女のように、また反則を見つめる。
(ふふふ、簡単に落ちてら、ちょっと前までライバルとしていつも俺を邪魔してきたくせにな、一生こうして飼われるといいさ♪)
反則は心の中では邪険な笑みで従順な犬のような坂丸を罵っていた。
「ぼっちゃま!敵が乗り込んできました!!」
その時メイドが危機的状況を反則に知らせる。
「そう言うわけだ、君には仕事をしてもらうよ♪」
反則は坂丸にそう言い、坂丸は決意を固めるように頷いた。
ーーー
今ユズル達の目の前には沢山の「YUI」が培養液に漬けられ、眠っていた。
「なんだ!?ユイさんと同じ顔の人達がこんなに沢山………!」
カプセルの中に漬けられた無表情なまま眠りについている「YUI」
ユズルの隣にいる「ユイ」、彼女も彼女らの一人だった。
そしてユイ先輩も…。
そしてユイはカプセルに漬けられている彼女らの時折吹く泡から哀しげな波動を感じた。
「みんな…今ここから出してあげるからね…」
ユイはハリセンを手に持ってカプセルを割ろうとした。
「私の大事な「サンプル」に手出しはさせないよ!!」
そんな時、ユズルとユイの背後から若い男性の声が響いた。
振り向くと見覚えのある美青年の姿がそこにあった。
「異締反則!!」
そう、ユズルや坂丸にとっての宿敵、異締反則だった。
目の前の異締反則は白いオーラを発してクローン室を歩み寄る。
「何をしようとしていた君達、我が社の大事な商品、簡単には渡しはしないよ!」
反則はほくそ笑む。
「反則さん、こんなに沢山のクローンを生んで何が目的なのです!?これだけのクローンが世にいたら世界は混乱し、悪用する者まで現れますよ!!」
ユイはハリセンを反則に突き出して強く問いただした。
「これを誰から聞いたのかはわからないが我が社のクローン技術は世の中の役に立つ可能性があるんだ、不治の病すら治せるきっかけも出来るかも知れない」
反則は冷静にもっともらしい回答をする。
「そのクローンの人達の気持ちを考えた事はありますか!?彼らにだって感情があります!」
「感情があるからこそ、それが大事なサンプルになるんだよ、相手の気持ちがわかってこそ、事を有利に勧める事が出来る」
反則のビジネストークは相当なもので、一句一句的確に答えていく。
(すごい…文字には書けても…実際これだけ質問に答えられるのは難しいことだ…!それを反則の奴は的確に答えられている…それに引き換え俺は…」
ユズルはうなだれながら反則とユイの言葉を半分聞き流していった。
「ユズルさん!!」
そこでユイの声が。
「ユアセルフ(自分)をしっかり持ってください!こんな、捻くれた人間になっちゃいけません!」
ユズルは思った。
俺はちょっと前まで反則のような部分があった。
しかし坂丸の力で俺は更生された!
ユズルはユイの励ましに勇気づけられ、聖剣を構えた。
「反則!貴様の、曲がった根性!俺が修正してやる!!」
「修正…だと?ククク…」
反則は笑い出す。
「貴様の口から修正という言葉を聞くと笑いしか出てこないな、いじめごときで奈落の底に堕ちたお前がな…」
反則はニタリと口元を上に寄せた。
ユズルは反則の前に剣を構えたまま動けないでいる。
「Mrユズル!しかし貴方は今こうして更生しています!人間誰でも堕ちる時はあります!ミーだって…!ミーは…」
ユイは高校時代、どう言う生活を送っていたのかは記憶にない、何故ならクローンとして作られたからだ。
気がつけば成人女性となっていて、色々と教えられていた。
「もういいよユイさん!!」
ユズルは叫んだ。
「君は学生時代を過ごしていない!必死に思い出そうとする必要は無いよ!!」
「フハハ!YUIにその事を言っちゃって良いのかな?」
反則は笑い出した。
「良いんです、Mrユズル…」
ユイは優しく微笑み眉をひそめた。
「ミーの脳はかのユイという少女のものと同じ遺伝子で作られている、記憶を辿れば見えてきます…彼女の…過去が…」
YUIはユイというかの少女の脳に刻まれた遺伝子を辿った。
するとユイの瞳からは大粒の涙が。
「な、なんだ?」
反則も流石にその状況は読み込めないでいた。
「ミーは独りでは無かった…」
「ははは、当然だ!現にこれだけのクローンが…」
「そうじゃないよ」
ユイの言葉に反則は押し黙る。
「いじめられてたらね、独りぼっちになっちゃうんだ、ミーは無理してファイトしちゃう所があって、それで目をつけられた時があったんだ…」
ユイは思い出したくもない過去もあるのだろう、時折複雑な表情を浮かべながら淡々と話した。
「…とても辛かった、死ねば楽になるかなと思う時もあった、学校行きたくない時だって沢山あったよ」
「そんな時にもミーに力を貸してくれる人達がいたの、もし彼らがいなかったら、ミーもユズルさんみたいになってたかも知れない…」
「ユイさん…」
「でも思うんだ、落ち込んだり、辛くなった過去が無いと強くなれないし、そう言う人の立場に立って考える事も出来ないって!」
そしてユイはユズルに視線を移す。
「だからユズルさん、きっと貴方は強く、優しくなれる!クローンのミーが言うのも何だけど…自信を持って良いんだよ!」
ユズルは、ユイは生身のままのユイがそう語ってくれているのを感じた。
ユイも、本当は繊細で、強いわけでは無いのに無理して頑張ってた、いじめられてやはりユズルみたいに堕ちかけた時もあった、だけど、こんな時に誰かがいたから乗り越えられたんだ!
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