第373話:暖簾の依頼とシートの素案

 先ずは暖簾から依頼しようと机がある場所へと進む。


「まず、レックスさんに見て欲しい図案があるんだが…」


 マジックバッグから取り出したように見せかけ、図案に暖簾として作る予定の大きさで描かれた品をレックス夫妻に見せた。


「…かなり小さなサイズだな。

 何かの印として作る…て事か?」


「ああ、未だ知られて無い施設なんだが、

 完成した状態で見せたとしても、

 男女別で使う施設だと言う事が、

 理解できない状態なんだ」


 男女別で使う施設?と言う顔になるが、知られてない施設なら有り得るか…と話を先に進めて貰う事にしたようだ。


「じゃあ男性の色と女性の色を使って作る…

 と言う方向に持っていくんだな?

 で(切れ目を指し)此処は何故、

 切れてるんだ?」


「カーテンは光を遮断したり、

 取り入れたりする為に、

 布の状態で作って行くだろ?

 切れ目があるのは、

 布の奥に入って行く為なんだ」


「入って…」「行くですって?」


 夫婦仲が宜しいようで、言葉が台詞として成立していた。


「傷を癒す温泉と言う施設を作ったんだ。

 そこでは男女別で入口が分けられていて、

 女性が着替える場所に男性が入ったり、

 男性が着替える場所に女性が入らない為の、

 仕切りでもあるんだ」


「…だからと言って、

 何故、別々なんだ?」


「風呂って爵位がある人だけだろ?」


「そうだな」


「その温泉施設は、

 怪我した人だけでなく、

 どんな身分の人でも入れる大きな風呂なんだ」


「「はあぁ?!誰でも入れる風呂だと?!」ですって!?」


 ぉぉぅ。驚く言葉も一緒とか…どんだけ息が合ってんだか。


「まあ…初めての施設だからな。

 最初は怪我を負った冒険者だけが、

 行く…通う事になるだろうがな、

 入口を分けて無いと…な」


 じっくり図案を見て


「形は判った…使用目的も理解できる…が、

 大きさ的に問題ないのか?」


「実物を見たいって事なら…

 俺の魔法でしか行けないぞ?」


「・・・え・・・」


「鉱山の奥地…

 元を正せば立ち入り禁止の場所に、

 れはあるからな」


 高ランクしか立ち入れない場所に何故、施設が…?と言う顔になるのだが、作ってしまったのだろうな…と言う考えに至ったようで


「…規格外もイイ所だな。

 その移動方法で行ったとして、

 秘匿事項だろうな」


 と推測してくれた。


「サイズは実際の施設で測ったから、

 正確だと思う。

 心配なら見本で1枚…作って俺が太鼓判、

 押す形に出来るが…どうする?」


 確かに見本を作り、現地で「大丈夫だ」と確認して貰えるなら…と考えたレックスは


「それで構わないなら早速、作らせて貰おう。

 でだ、もう1つの方はどうするんだ?」


 と別の品…座席を指して「これ、どうすんの?」てな顔でリョータを見た。


「シートだが、

 枠が出来なければ合わせて縫うって事、

 出来ないだろう?

 それにクッション性のある品を間に挟む予定だしな」


 クッション性のある品を作る事は流石に、カーテン職人では無理だ。


 もう1人…追加となるか?と考えたが、何も職人を探さずとも、クッション材として最適な魔物の毛…日本流に言うとウールやコットンなどがあれば自分で作れないか?と発想を変え、職人の追加はしなくてイイと言う結論に至り、いよいよ本格的に始動して行く事となるのだった

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