第362話:鋳物砂で型取りの筈が・・・

 鋳物砂を「どうすれば型取りに使えるか」など判らない筈なのだが、ボックスから木片が勝手に出て来て木枠を作り、箱のような形が作られている…。


「何コレ」「何だコレは!」


 リョータの脳内に「建築の神」からの詫びが届いた。


{すまぬリョータ。

 周囲に他人がいる事を忘れておって、

 勝手に必要な材料を取り出し、

 作れるようにしてしもうた}


 …何ヤラかしてんですかぁ!


 ヘンリーさんや魔道具職人さんたちが、固まったじゃないですか!


 阿遅高日子根神あじすきたかひこねのかみから謝罪されたものの、目撃した職人たちに、謝罪の言葉など届く筈がない。


「リョ…リョータ…これは一体…?」


「…これ…ね…異世界の神様が結果…

 なんだよ」


 異世界の神が勝手に…?と言う顔になるのは仕方ない。


 これまで神の御業みわざなど、体験した事どころか「ある事すら知らなかった」のに、目の前で御業とも言える事柄が起きているのだ。


 目が点どころではないのは判り切っている。


「異世界の神が干渉できるのが信じられんが…」


「出来てしまっているから…な…」


 前者はヘンリー、後者がジェイコブ…両者共「勝手に作られてしまった品」を目にし、飽きれ顔になっている。


「何か…すみません…」


 ヤラかしたのが神だとしても、関わっているのは自分…とばかりにシュン…となったリョータに対して


「謝るな」


 とジェイコブが言えば


「謝らなくてい。

 謝罪しなきゃならない事では無いからな」


 とヘンリーも続き、リョータの精神状態が削られる事を避けてくれた。


「そうは言っても…コレは…」


 鋳物砂で型押し出来る状態に用意された箱、しかもエンジン(半分ではある)が、丸っと入る大きさが2個…鎮座している。


「いいんだよ、

 お前さんが気にしたら駄目だ」


 ヘンリーがポン…とリョータの頭に手を置いた。


「ヘンリーさん・・・?」


「ヤラかしたのは異世界の神様なんだろう?

 お前さんがヤラかした訳じゃないんだからな、

 謝罪しなくていい。驚きはしたが、

 お前さんは魔術けているんだろ?」


 そう言われ「はっ?!」となった。


如何様いかさまって言われるくらいには・・・」


「い、如何様っ…まあ、それは置いておくが、

 此処ここにいるのは誓約した職人なんだろう?

 この品が此処でしか使われないんだから、

 外に漏れる事は有り得ない…だろ?」


「あ・・・」


 職人たちに口外しないよう、誓約書を書いて貰っていた事を綺麗サッパリ忘れていたのだ。


「ようやく思い出したか。

 お前さんは、

 忘れっぽいのだと知られてしまったな」


 ニヤリ…とされては苦笑するしかなくなるリョータ。


 忘れっぽい訳じゃないんだけどなぁ…まあ良くヤラかしてるのは間違いないから否定できぬとか…せぬ。


「異世界の神様だったか、

 助力してくれるのだろう?」


「…あまりヤラかさないで欲しいんですけどね、

 この調子だと未だヤラかしそうですよね…」


「「「「「「「はあぁぁぁぁぁぁぁぁ」」」」」」」


 全員が盛大な溜息を吐き出すくらいなヤラかしではあるが、有難いヤラかしなので放置する事にしたのだが、その事により…車作成に必要な道具類がドン!と送られて来る事になろうとは、誰も思っていなかった

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る