第353話:作成開始したようで…
職人たちが材料を揃えた翌日の事、リョータは色々と説明しきれてない部分に関しての詳細を伝えた方が良いと考え、訪問を決めたようだ。
リョータの行動としては、ムーア卿宅へ訪問した翌日なのだが、職人たちは、そんな事情など知る由もない。
だからこそ表面上、平静を装わなくてはならないのだが、どうやら顔色が悪くなっているようだった。
何故なら、訪問したリッツェで顔見知りとなってしまった門番に
「あれ?リョータ…お前、
えらく顔色が悪いが、
体調がすぐれないんじゃないのか?」
と聞かれた事で自覚したようだった。
「…ちょっとね…元同級生が…」
言おうとしたのだが、更に顔色が青くなったのを見かねて
「言わなくていい。それ以上、言うんじゃない。
お前さんが何かしらを体験してしまったと言うのは見て取れたしな。
まあ無理に伝える事は無いからな」
と気遣ってくれた。
「・・・ありがと・・・」
クロフォード商会方面へと歩く後ろ姿は、門番が「大丈夫だろうか?」と心配してしまう程に憔悴しているように見えた。
* * * *
~side職人たち~
「そっちの木材は枠に使うから、そのままで置いてくれ」
「そちらの道具はそのまま使うから、
道具作りと馬車作りが同時進行し始めている室内に、憔悴しきったリョータが到着し、あっけに取られてしまう。
(なっ!?一体、何が起きたんだぁ?!)
一気に現実へと引き戻されたかの如く、顔色は戻り、作られて行く様を茫然自失な表情で立ち尽くした。
「あ!リョータ!!聞きたいことがあるんだが、
大丈夫だろうか?」
リョータの姿を見とがめたローガンが声を掛けた。
「あ、ああ。構わないが…一体どうしたんだ?
こんなに早く動くとは思ってなかったが…」
「見た目が馬車っぽいからな。
枠組みだけでも作っておくのもアリかと思ってな。
道具類をどう組み込むかは全てを解体しなければ、
判らないと見たんだ。
でだ、座る場所に使われてる素材なんだが…」
「あー…座席の所に使う生地なら、
服つくる生地でもいいと思うんだ」
「「「え」」」「俺たち」「魔物の素材を」「使うものだと…」
「それって匂いが消せないでしょ?
魔法で消せるとか、匂いがしない付与…だっけ。
そう言うのを付けられる人がいるなら、
お願い出来るけど…いないでしょ?」
時折、子供っぽい喋り方となってしまうのは、ご愛敬。
本質的には「中身が大人」だけで、見た目は子供だから突っ込みを入れられる事なく会話が続いて行く(気づいてないだけだったりする)。
「いないな」「魔物を使うか聞く気だったし…」
「座席部分ってクッション性、持たせるつもりだろ?
だったら布か…あるか知らないけど革でもいいんじゃないかな」
「かわ・・・?」
「靴の素材って、もしかして魔物?
靴って毎日履いても消耗しないけど、
魔物の皮で作られたりしてるの?」
そこまで言われれば「革」が存在しており、魔物の皮を
「だったら形を形成したクッション性を持たせた品に、
革もしくは布を巻き付ける…と言う事か」
色々と意見を交わす姿を見て、これなら解体したとしても元通りに出来そうだなと嬉しく思うリョータだった
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