第310話:会長を交えた交渉(3)

 レイが最初に取り掛かった方が良い事を、リョータに聞く事にした。


「リョータ、

 真っ先に始めなければならないのは、口が堅く、

 作る品を漏洩させない約束が、

 出来る職人を抱え込む事からで良いだろうか」


「職人さんも信用が第一だろうから、

 納得した上で紙面契約を持ちかける方が良いと思う。

 恐らく誰もがクロフォード商会の職人になりたいと、

 希望を言うだろうから、

 お抱え職人になるなら誓約書を書いて貰う事になる…

 と通達して…それでもなりたいと望んだ人だけにすべきだろうね」


「確かに10人以上、

 来てしまえば、甘い汁を吸いたいと願って、

 集まる不届き者もいるだろう。

 そう言う不埒な輩を排除しなければ、

 知り得た事柄を暴露し、

 変な方向へ開発されかねない…か」


「誓約書の文言は商会で考えた方がいいよ。

 俺が指摘したとしても、

 世界の常識が全くないからな。

 俺の世界では専門の技術者…

 つまり職人を育成する場所すら存在するからな」


「リョータ…君の世界で動いているであろう自動車は…

 見る事が出来ないだろうか?」


「エーテルディアに持って来れると思う?

 それに異世界で自動車は魔石に魔力を充填して…

 ではなく液体で動く車と、

 電力を合わせて動く物に分かれているからね。

 こちらで明かりと言えば魔法で灯すか、

 蝋燭を使って灯すか…だろう?」


「…まさかと思うが…それすらも開発できる?」


「液体は無理だよ。

 開発と言うより探すと言う方が正しい。

 電気…明かりを灯す方法も恐らくだけど、

 難しいと思う」


 何せ太陽光発電なんてシステムを構築するとしても、俺…技術者じゃないから設計図とか書けねぇし、作れと言われても無理だもん。


 転写コピーって手段を持っているけど、流石に向こうにほんで使われてる素材が、異世界こっちにあるとは思えんし…。


「そう…か。転移は禁忌魔術…

 使ったと知られれば処刑とまでは行かないが、

 幽閉は間違いない…か」


 ん?!転移魔法って禁術だったの!?でも過去に…ああ、過去に異世界から呼んだ事で、禁止にしたんだろうな。


「…見せるとしても、誰も見ない場所って用意できるの?」


「え…?」


「だって馬車を作る事が出来るのは、

 既にあるからでしょ?

 無い物を見せるとして、誰も見ない場所じゃないと、

 大パニックになるじゃないか」


「あ・・・そう・・・だな」


 考えて無かったんかーい。


 まあ本体が馬車じゃあ「どんな形になるか判らない」だろうからね。


 ナビさんや、縮尺って概念…あるの?


(御座いません。ですのでミニカーなどの小さな見本を出そう、と考えているのでしたら、お止め下さいませ)


 ミニカーって言葉、何で知ってるんだ?!しかもバレてるし。


「どんな形になるのか判らない状態だからこそ、

 職人さんを限定しなきゃなんだよ。

 現状の馬車は馬が動かしてくれる形だけど、

 俺が提案した形は馬の代わりに、

 魔力充填した魔石を設置して人が動かす形。

 勿論、液体が開発もしくは発見できるのなら、

 それに越したことないけど…

 魔力充填した魔石を動力として動かせるか?

 と言うのも、職人さんの意見を聞かないと駄目だと思う」


 今まで聞いた事も提案された事もない事柄を、10歳の子供から為されてると言う事実に、戸惑うしかない参加者たちだった

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