第309話:会長を交えた交渉(2)
アイザックが重たい口を開く。
「所でレイ、彼は何を我が家に願い出たのか、
教えて貰えるだろうか?」
「それは…乗り物の開発ですよ。
我々が王都に向かう場合、
1週間から2週間は見なければなりませんし、
それ以上、掛かる場所に行く場合は、
1か月を掛けなければなりませんよね?」
「…そうだ…が…まさか…」
「そのまさかです…。
彼は出立した日に、
王都へ到着できるような乗り物を提案してきました」
「なっ?!」「「何ですってぇ!?」」
「道路…道を整備してない状態だと、
人と馬車の接触…
起きてますよね?」
「ああ、馬車を通す為に護衛が馬で先行し、
人が馬車に接触しないよう注意しているな」
「人が歩く場所と馬車が通る場所を区別すれば、
その手間も省けるようになると思う。
だけど俺は、道を整備する担当箇所って言うのだろうか、
誰が整備してるのか知らないから…
まずは乗り物を作って貰おうと考えたんだ。
提案して1年で出来る代物でも無いでしょう?」
見た目は10歳なのに、言葉が大人なリョータを見てアイザックは、説明を受けていなければ応対に困っただろうなと思った。
しかも人と馬車の通る道を区別するなど、今まで考えた事すらなかったのだから、提案を受けて「それは安全に馬車を走らせる事も可能になるな」と思えた。
「確かに図案を貰っても即座に作れるぞ…とは言えぬし、
これを職人に作ってくれ、と伝えたとしても、
完成品には至らないだろうな。
まあ見える範囲なら作れるかも知れないが、
流石に見えてない所に使う品と言うのだろうか、
そう言うのも存在するのだろう?」
「ああ、ただ異世界で使っている品なら摩耗…
すり減る事はないだろうけど、
こちらに擦り減らない素材が存在するか否か知らないからね。
これが欲しい、あれが作れないか…と言う事を言えないんだ」
「逆に言えば、素材があれば職人に伝え作る事も可能になる…
と言う事だろうか?」
「詳しい設計図が書ける訳じゃないけど、
動く仕組みを伝えれば職人さんならスキル…
持ってますよね?
スキルを使えるのなら作れるって断言できるけど、
クロフォード商会のお抱え職人と言う立場にしなければ、
漏洩するぞ?」
「…確かに…そうか。
職人を我が商会に抱えて漏洩防止をしなければ、
盗まれてしまい、
別の事柄へ使いかねない…と言う事か」
「そう言う事ですよ。
サミーさんには、
食に関する事柄を広めて貰いたいと思ってるんですけど…
大丈夫?」
自分に話が及ぶなどと思ってなかったサミーだが、
「えぇ問題ないわ。
リョータく…様の要望を形にすれば良いのかしら?」
「今まで通りで構わないよ。
何せ見た目は
白米を精米…
食べられるように加工する機械を作るなら、
誰に頼めばいいか考えて欲しいんだ。
煮炊き出来る状態にして小分けで売れば、
買って帰った人は白米にする手間が省けるからね」
開発と同時進行で、道の整備や食の発達まで手を広げようとするリョータ…彼が絡まれ体質だと言う事を綺麗に忘れ「巻き込まれ」が発生する事になるとは、この時、気づく事など不可能だった
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