第308話:会長を交えた交渉(1)

 仕方ないな…と考えたリョータは、クロフォード商会のトップにいるであろう2名と、白米で世話になったサミーに誓約書を書いて貰う事で、交渉に加わって貰おうと考えた。


「…これ以上、交渉を知ろうと思う人は増えないですよね?」


 レイは暫く考え


「いないとは思いたいが…

 母上?そこで何をなさってるのでしょうか」


 と「こっそり」何かしらを知ろうと待機していた母の姿を見とがめる。


「い、いやだわ。

 レイ気づいていたの?」


 自分だけ仲間外れは嫌だわ…とばかりに身を隠そうとしていた母…。


 レイは好奇心旺盛なのは良いが…と溜息を吐き出し


「リョータ殿…我が家族と恋人の参加を認めて貰えるだろうか?」


 と交渉の場に全員を認めてくれないだろうか、と提案したのだ。


「…だったら誓約書を書いて貰える?」


「「「え・・・?!」」」


「だって、このまま話を始めたとして、

 知り得た事を広めないって断言できるの?」


 3人ともが顔を見合わせ


「「「出来そうにないな」わね」」


 と正直に白状した。


「ここで見聞きした事を誰にも言わない、

 誰にも教えない、

 技術者の方にも誓約書を書いて貰う…

 これくらいでいいかな?

 僕…そんなに詳しくないんだけど…」


 リョータはエーテルディアで交わされる誓約書の中身を知らないからこそ、不安だった。


「…そうだな、

 クロフォード商会内で交わされた会話の漏洩禁止と、

 リョータの出自を漏洩させないと言う文言も加えないとだろうな」


「リョータ殿の出自…?」


「あら、そう言えば記憶がどうのって噂を…」


「それを踏まえて誓約書を書いて違反したら、

 僕に関する全ての記憶を忘れて貰おうかな」


 サミーたちは「判った」と言う意味を込めて首を縦に振り、使用人を呼んで誓約書を作る為、魔法が施された紙を4枚…持って来させた。


「リョータ殿、私を含め4名で署名する事で良いだろうか?」


 4枚、持って来て貰ったものの、同じ事を書き記し、誓約するよりは…と思ったが


「でも、それって誰か1人でも誓いを破ったら、

 全員が記憶なくす事になるよ?

 それでいいの?開発すら出来なくなるよ?!」


 そう言われ、1枚に4名の署名をするのではなく、同じ文言の書き出し、署名はしても異世界に印鑑など無い為、拇印を押して貰う事で誓約書は完成した。


 直後、リョータは周囲が見える状態で結界を張り、遮音を施して「盛大に驚く声」を抑える事にした。


「これで我が家は、

 リョータ殿が発言した事柄を他人に話す事は出来なくなった。

 それだけでなく、知り得た事柄を職人に教える際は、

 誓約させる。

 父上、母上、サミー…

 彼は異世界…違う世界で生を終え、

 このエーテルディアに生まれ変わった…転生者だそうだ」


「「「ええっ!?」」」


 デスヨネー…まあ話すって言われた時に覚悟はしてたけど、これ…魔法かけてなかったら大騒ぎで集まるどころか、誓約書だらけになっちゃう所だったって、気づいてるかねぇ…。


「父上?母上?サミー?

 それだけ驚いたら使用人たちに、

 何か起きたのではないかと、

 心配させてしまってる、と気づいてますか?」


「「「あ・・・」」」


「はあ~~~~~~~。

 僕…俺が魔法掛けたから良かったけど、

 誓約書だらけの部屋にするつもりだったの?」


 リョータは呆れ声で3人に声を掛け、驚きで声を上げてしまった3名は、静かに交渉の場にいる決意をしてくれた(らしい)

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