第304話:本格的な交渉開始(1)
クロフォード邸へと招き入れられたリョータは、その内装に驚かされていた。
「う…わぁ…凄い…」
商売人の屋敷だから「派手」だと決めつけていた自分を殴りたい…と思ったのは言うまでもないだろう。
何せ、そこかしこに見える範囲にある品々は「普通の家庭にあるような質素な品」だ。
「…商人のイメージが、変わってしまったかい?」
とニコニコした顔で言われ、バツが悪そうに
「はい…すみません…思ってしまいました」
と正直に吐露した。
「まあ君が何かしら嫌な事に巻き込まれてしまって来たから、
そう思ってしまったのかな?とは思ったけど、
想像以上だったようだね」
「うん…リッツェの領主様からは養子にと何故か望まれ、
魔術を習うべく通った魔法学校では、強さの秘密を知りたいと絡まれ、
騎士学校でも絡まれてるから…」
部屋へと案内されながらも様々な絡まれが顔に出てしまったリョータ、それに気づいたレイは訪問理由へと方向転換した方が良さそうだ、と判断したようだ。
「…何とも…凄い苦労してるんだね。
今回、私の所へ来た理由を聞かせて貰えるかい?」
「はい、実は開発して頂きたい品があるのです」
そう伝えた瞬間、クロフォード様が商人の顔へと変貌して行くのが分かった。
「その情報を私に伝えて作って売って欲しい…と?」
「出来れば…です。
僕としては、あれば便利だろうな…
で思い描いた品ですので、実際に見た場合、
これは扱えないと言われてしまう可能性もあると思ってます」
子供な会話…ではない事にクロフォードは戸惑い始め、どう情報を引き出そうかと考えている雰囲気は見て取れた。
「…商人は口が堅い…
それを見越しての交渉と思っていいんだな?」
流石に気づくか。
「はい。僕…いや…俺は転生者で、
異世界の記憶を持って生まれ変わりました。
なので異世界の品や食べ物を普及できれば…
と思い訪問したんだ」
急に大人びた言葉になり、自分が転生者で異世界の記憶がある…と言われ目が飛び出しそうなくらいに驚いたレイ。
だが、次の瞬間「これは外に絶対に出してはならない情報だ」と気を引き締め、部屋に遮音の魔法を施した上で鍵を閉め、誰も入って来れないよう整えた。
「…転生…生まれ変わった…と言う事は、
前の生は大人だった…と言う事か?」
「クロフォード様の年齢を知りませんので、
年上ですとか年下ですと断言は出来ません。
今の姿は10歳ですが元は35です」
25も若くなってしまった事を受け入れ、生活し始めたのだと思えば、どれだけ苦労したか把握できた。
「まさか…サミーと出会ったのも偶然では無…
「それは流石に偶然ですよ」え?」
「俺が籾殻…米を探す為に商業ギルドへ向かおうとしてる時、
偶然だったが、籾殻が袋からこぼれてたんだよ。
それを指摘した相手がサミーさんだった…て事」
「そう…か。で?今日来た理由は?」
「異世界で18歳以上なら許可を貰う試験を受ければ、
乗る事が出来る…自動車と言う乗り物を開発して欲しい、
と言う交渉ですよ」
理由を知り、何を教えて貰えるのかと身構えたのだが、まさか大人になって3年すれば誰でも試験さえ受けれると乗る事が出来る品を開発しないか、と持ち込まれるなど思いもしなかったが、話を聞かなくては勿体ないと思い、交渉しようと決意したレイだった
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