第300話:絶対零度な執務室

 領主であるエリア様が登城するかの如くな恰好…ではなく、重要人物と面会する時の恰好で現れた(らしい)。


「主人が重ね重ね申し訳ない態度を取った事をお詫び致します」


 執事の男性が深々と頭を下げる光景を見せられて、リョータは戸惑いながら言葉を選び始める。


「名前を聞いてないから執事さん、

 と呼ばせて貰うけど、

 その謝罪って執事さんがする必要ないよね?

 だって僕って言う子供が来る事すら教えて貰えてないんでしょ?」


「これは失礼いたしました。

 私はティング家の執事をしておりますセバスチャンと申します。

 お子様が訪問される事を知ったのは、

 主人が襲い掛かった時ですので、

 知らせては貰ってませんね」


「僕の名前はリョータって言います。

 セバスチャン様が教えて貰えなかったのは、

 多分だけど、

 僕の力量を見たいから手を出すなとか言った時に、

 叱られる…って思ったんじゃないかな」


「「うっ」」


 夫婦そろって言葉を詰まらせた…と言う事は、リョータの予測は正しいと言う事なのだろう。


「…一体全体、何をどうしたら、そんな考えを抱くのです?」


「い、いやっ…そのっ…

 子供と言えど、そんな力量はと思って…」


「リョータ様はスタンピードを収束させ、

 厄災のドラゴンと対峙をお持ちなのですぞ?

 それを…測り知りたいからと言って…

 訪問直後に突撃ですか…

 お二方を再教育、

 しないとならないのですかね」


 室内のリョータが座る場所、以外が「絶対零度」な冷気に包まれている感覚が見て取れた。


 うっわぁ~…この領主様は毎度、とは言わんでも「やらかし」まくって来たのか。


 そうじゃなきゃ執事さんが、ここまで怒りを露わにせんよね。


「ちょっと待てセバス!

 それは無いだろう!?

 お前の再教育を受けた者たちが、

 どうなったか知らん訳ではないだろう?!」


 おんやぁ?この言い方…かなり厳しい教育を成されるって知ってるって事か。


「えぇ。十二分に知ってますよ。

 だからこそ旦那様方を教育し直さなければ…

 と思ったのですよ」


 セバスの瞳に「容赦しませんから」と言う目力が宿っているかのようだった。


「セ、セ、セバスぅ?!

 やめよう?止めて欲しいんだけどっ」


「…でしたらリョータ様を襲撃した事、

 謝罪なさいませ」


 今にも室内が氷漬けされそうな雰囲気に折れたのか、エリアがリョータに深々と頭を下げ


「訪問直後に襲撃した事、

 誠に申し訳なく思う。

 いくら力量を知りたいからと言って、

 訪問して来る子供に取る態度では無かったと、

 反省しておる」


 それはもう、これ以上の謝罪は不要だと言わせてしまえるような謝罪を受けたリョータは


「…謝罪は受け取りましたので…

 これからの交渉に不利な事を言わないで頂ければと思います」


 と伝え、これから交渉する事柄に対して無理難題を突き付けられないよう伝える事が出来たのだった

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