第297話:閑話~ティングの領主に届いた不審な手紙

 リョータがティング領主宛てに魔法便を飛ばした頃、領主邸の執事が手紙に気づき手に取った。


「これは…領主様への手紙…?

 しかも子供の筆跡…

 どう言う事だろうか」


 不審極まりない手紙をペーパーナイフを使い開封する。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    ティングの領主様


 初めまして、僕はリョータと言う冒険者で

 魔法剣士を目指す子供です。

 領主様に突然の手紙を出す事をお許し下さい。

 実を言いますと乗り物に関して思いついた事が

 御座いまして、相談させて頂きたく、

 又、率直な意見を頂きたく、

 面会して頂けたらと思い、

 手紙を出させて頂きました。

 つきましては訪問して良い日時を教えて頂けたらと思います。


                   リョータ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 冒険者の子供が「このような文章を書いて寄越す事」が信じられないのだが、相談事があると記されていては、領主であるエリア・ティングへ手紙の内容を伝えた方が良いと判断した。


* * * *

「旦那様、冒険者のリョータ様から手紙が送られて来ました」


「ん…?その名は王都から自由を得たと通達をされた者の名だな。

 どのような内容なのだ?」


「乗り物に関して思いついた事柄があるそうで、

 相談したいと申し出られております」


「相談…か。

 それにしては王様ではなく、

 私に来るとは何かしらの思惑あっての事だろうか?」


 そこへ名参謀でもある妻グレースが、紅茶とクッキーをワゴンに乗せ現れた。


「思惑があって会いたいのであれば、

 許可なく訪問してるのではなくて?

 こうして面会の手紙を送って来る、

 と言う事は…があるからですわ」


「グレース…」


「リョータ様と言う子供は、

 王都で発生してしまった、

 スタンピードを収束させた方でしたわよね?」


「あぁ。王様から欲しいものは何か?と問われ、

 自由が欲しいと望み、

 冒険者で学生…だっただろうか。

 そう言う立ち位置を獲得したらしい」


「まあ。

 それは素晴らしい才覚を持っているかも知れませんわね」


「ならば会う一択で大丈夫だな?」


「えぇ。

 彼の身が危険にさらされるような内容であれば、

 我が家が助力している子供である、

 と知らしめるだけで宜しいでしょう?」


「そうだな」


 あれよ、あれよとリョータと面会する事が決まり、2日後の午後に訪問して欲しいとの返事を魔法便に託したのだった。


「リョータくん…と言う子供は、

 何を望んで旦那様に面会を申し込んだのかしら」


「どうも乗り物に関して意見が欲しいそうだ」


「まぁ、乗り物と言えば馬車しか思い浮かびませんけども…

 彼の中で、それ以外の品が思い浮かび、

 相談するなら我が家と決めて下さったのかしらね」


「恐らく…ではあるが、

 私の事を知っておったのだと思う」


「ふふふ…どの面で才能があるのかを見るのが、

 楽しみだわ」


 策略家の旦那と参謀の妻…そんな領主邸に乗り込もうとする子供が哀れだな…と思った執事は、何かあれば全力で子供を守ろうと思ったのだった

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