第238話:授業後に外出し必要な品を探す

 魔法科と違い、騎士科の授業は実戦が主で、座学は社会に出た時に必要不可欠な算術やマナー、社交場での立ち居振る舞いを習う。


 俺にとっては算術は小学校の過程で足し算、引き算、掛け算、割り算まで習っているが自信を持って出来るか?と問われればノー。


 何せ便利な「電卓」ってのがあったし、算盤そろばんってのも使う事もあったけど、主に電卓で計算してたもんな~。


 最も苦労しそうなのが爵位を持つ家でのマナーだろうと踏んでいた。


 一応さ?社会人してたけど、せいぜい行ったとしても先輩の自宅までだし、上司の家は招かれれば行くだろうけど、そこまでフランクじゃなかったもん。


 だからこそ、異世界での爵位持ちの家に招かれた時の対応策は、真剣に耳を傾けて体に染み込ませるかの如く覚えて行くしかなかった。


 騎士見習いとは言え、将来「護衛騎士」になる可能性もあれば「爵位持ちの自宅を守る騎士」になる事すらあるとの事。


 優秀な騎士は、それこそ王家に派遣される事があるそうな。


 それを聞いた俺は「リッツェの領主だ」。


 拝謁での出来事は領主にとっては「渡りに船」だったろうけど、俺にとっちゃ「寝耳に水」な上に「骨折り損のくたびれ儲け」となったから、行くのすら「やなこった」だ。


 強制的に行かなきゃならない、と言われたら王都を望んで叶えられっか?


 その辺は卒業間近になれば選択できるらしいので、記憶の奥底に追いやっておく事にして、目下の目標は、団長さんに10個の握り飯を用意する為の箱を購入しなきゃなのだ。


(市販品に握り飯10個、入る箱ってあるんかな?

 無かったらサンドイッチを包んでた紙を買うか)


 どちらも雑貨屋で扱っているらしいので、外出許可を貰い買い物に出かける事とした。



 * * * *


 それにしても、あの紙で10個分を包めるかなぁ。


 大きさを選べるんだったら1個あたりの大きさは、予め紙片に書き写して置いたから、見せてくれと言われても大丈夫とは思うけど…。


 見た事のない形だからなぁ、不思議がられるのは間違いないだろーね。


 今回は雑貨屋とは言え確実に品を扱ってる場所を聞く為、商業ギルドに向かう事にした(この時リョータは「二度と行くかっ!」と言った事を忘れている)。


 前回、家畜の餌を扱ってる場所を聞くつもりで移動してる時、偶然、白米が袋からこぼれてるのを見つけたからこそ、場所を把握できたけど、他の品に目を向けなかったからな。


 あのオネエさんがいる場所で売って無かったら困る。


 だからこそギルドで確実に場所を教えて貰おうと思ったのだ。


「…二度と来るつもり、なかったのにな…」


 かなり遠い記憶の彼方に消し去っていた事柄を思い出して吐き出したセリフ…。


 自分に何かさせる気でいたギルマスを思い出すと近寄りたくないってのが一番だった。


 しかし今回ばかりは「知らなければならない事柄」を聞くためだと腹を括る。


 尋ねるなら「質問口」だろうと当たりを付け、覚悟を持って聞く事にしたのだった

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