現場のリアル

再就職、入社から1週間、みっちり講習でした。


安全第一、衛生、コンプライアンス、KYT、リスクマネジメント、セキュリティ、輸出規定等、ありとあらゆる教育を数名の同期入社の方と受けました。


正確には4日と半日です。


各項目、試験があり、必ず100点を取らないといけません。

まあ大変でしたが、以前に似たような内容を受けているので、問題ありませんでした。


一番言われていたのは「STOP WORK」


分からない、知らない、難しい等感じたら、すぐに作業を止め、リーダーに聞く、相談する事。


何十回と言われました。


各講座、何かあれば入れてきます。


この言葉「Stop Work」


当然でしょう。


品質、コスト、納期より優先されるのは、


そう「安全」です。


了解です。問題ありませんでした。


このカリキュラムは5日間の予定でしたが、皆経験者で優秀な為にバンバン進み、半日余ってしまったんです。


時給が発生しているので、最後の半日は簡単な搬入、搬出のお手伝いをする事になりました。


完全素人です、言われた事をきっちりゆっくりすれば良いだけです。


男性の方こちらに…


と、連れて行かれた先には、重量物のパーツ。


指示してくるAさん

「これをこちらの台車に2人で載せて下さい」


「分かりました」


と、ここで、腰痛持ちの同期のTさんが焦りだします。

Tさん「あ…あの…私…」


と、ここで、「一名こっちに来てくれ~」


と、やったとばかりに逃げていきました。


Aさん

「あっ…どうしようかなぁ」


「とりあえずやりましょう」


「このユニットを台車から下ろして下さい」


私「分かりました」


ユニットを持とうとすると、Aさん「あ!駄目です、取っ手以外は触らないで下さい」


私「取っ手とは何処ですか?」


Aさん

「じゃあ見本を見せますね。こことここを持ち上げて、少しずつ引き出しながら持ち上げて、こうです。絶対に倒さないで下さい」


重さは20Kgはあります。


私「すみません、素人の私には無理です」


Aさん「いえ、私が出来る位だから貴方もできますよ」


私「…やってもいいですが、倒すリスクがありますよ」


Aさん「大丈夫ですよ」


私「…………」


仕方なく、作業にかかりました。


本当に重い、かなり慎重に、全身に力を込め、下ろします。


結局これを9台、やりました。


今までの4日半が完全無意味になりました。


現場で教育の最重要ポイントが通用しない。

これがいきなり確定しました。


作業を開始して僅か15分です….


私はSOS「出来ない」と言っているのに、させようとする。

再度、リスクを挙げるが、結果、「実行」。


はぁ…何がSTOP WORKだ…


このAさん、とにかく要領が悪い、個人的な見解だか、足を引きずっていたので、障がい者だろうと思う。


私は指示に従い、言われた事をやるだけだが、指示が悪く、私がやっている作業をAさんが怒られる…


と、いうか、色々怒られまくっている。


言葉使いから、完全なパワハラである。


何度も何度も、怒られているAさんの下に着いている私は…


胸くそ悪い?気分が悪い?なんとも言えない気持ちになりました。


少し離れて口論しています。

「じゃあ、私はもう教えません。貴方がやって下さい」


私「…………何なんだ?」


早く仕事が終われ、それしか考えなくなりました。


だって、言われた事をしても、Aさんが怒られるだけだから…


ラベルが見易い様に、このケーブル束を重ねて下さいと言われ、その通りにやると、Aさんが怒られる。


「そうじゃないだろう!ラベルを一度剥がしてテープで見易い様に付け直す、A、お前いつもそうやってるだろう、なぜそう教えない!?」


私「え?てか、そもそもラベル、剥がしていいのね?」「違うやつに貼っちまうよ?」

「これ間違うと大変どころじゃすまないよ?」


Aさんは怒られているのに、笑顔な場合があった。これは毎日、常習化しているのだ。


これが「現場のリアル」である。


あの20kgのユニット、落としていたらどうなっていただろう。

入社初週で、まざまざと見せつけられたパワハラ、しかし、Aさんが悪いんではない。

Aさんは一生懸命やっている。

適材適所ってのがあるだろう、周りの従業員、上司、貴方達が、Aさんを苦しめている。


そう感じた…


翌日、私は凄まじい筋肉痛になったのは言うまでもない。















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