永遠故に愛は流離う

未知乃みちる

プロローグ ( 1 )



 わたしの世界に、綺麗キレイじゃないものなどひとつもない。


 その中で特に綺麗キレイだと思った者へ、わたしは名前をあげた。


 わたしの大切な綺麗キレイは五つある。一番綺麗キレイなのは一つ目。彼が居なければ、わたしはここに居ないし、居続けることも出来なかった。わたしの一番大切な綺麗キレイ。わたしの、一番特別な綺麗キレイ。それがわたしの一つ目だった。


 流れる時の中で、彼だけは常に隣に居続けることが許される。彼をそうしたのは、わたしだ。許したのはわたしだ。その証を与えたのもわたしだ。


 そして、わたしをここに留まらせ続けるのは、彼だ。


 彼はただの人だった。わたしはただの人ではない。人の姿を魅せていただけのわたしに、彼は気付いていたのに、わたしを選んでくれたから、わたしは初めて彼に名前をあげた。


 あの人は「変化」があまり好きじゃない。いつだって、至極しごく淡々とした営みを好み、自分に正直に時代を流離さすらう。「変化」していく時代に順応しながら、「変化」しない自分でり続ける彼は、時としてわたしの救いとなる。「変化」出来ないわたしへの慰めをくれる。


 彼は、それでいいと微笑む。その微笑みは、わたしの一番好きな綺麗キレイで、ここに留まり続けることしか出来ないわたしの、帰ることを許されないわたしへの、懺悔ざんげなのかもしれない。


 そんな風に悲観的に考えてしまうなど、わたしらしくない。わたしはわたしだ。何処どこにいても、わたしはわたしで、全てわたしが選んだことだ。


 彼のせいでも、誰のせいでもない。彼のためだけでもない。


 互いに求め合った結果が、そういう答えを生み出した。


 わたしは、彼と同じで居たいと願い、その方法を模索もさくしなくてはならなくなった。


 恋しさと淋しさを覚えつつも、わたしはわたしという人の道を歩き出す道を見つけ、それを選ぶ決心をした。


 新しいことに出会う瞬間は胸がときめく。世界がきらめく。だからわたしは、この世界があまねく好きだ。

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