夢喰 第1部 -覚醒編ー
月冴(つきさゆ)
【序章】深夜の訪問者
「………いやいや、…せねば……」
「それよりも…の方が先決だろう……」
「お主が………を果たさぬか………」
「…仕方がない。気づかれぬうちに…」
静まり返った3LDKのマンションのどこかからか、人の話し声が聞こえる。それも1人や2人ではない。少なくとも4つ以上の異なる声色が確認できる。この4部屋しかないはずのマンションで、大勢の人のこそこそと
「すぅ………すぅ………」
照明の落ちた真っ暗な室内で寝息を立てる少女、【
それは、今年の4月から外務官僚である父親が、外交官としてイタリアに
とはいえ、マンション自体がセキュリティもしっかりしており、21時までは家政婦が家の面倒を見てくれている。それに、隣人には幼少期からの幼な
それもあってか、母親はよく思いついたように
「お父さんとこ、行ってくるから」
と、仕事で世界中を飛びまわる父親に、年に何回も数週間という長い間付き添い、家を留守がちにしている。実際、樹里と兄の2人だけで苦労したこともなければ、何不自由ない暮らしをさせてもらっているのだから、文句は言えない。
文句は一切なかった。16年間一度として、その身に危険が及ぶことはなかった。
この日を境に、樹里を取り巻く環境が一変するまでは。
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