お題【祭】 祭のあと
私は覚えている。あの祭のために奏でる音楽も、色鮮やかな供物の数々も。
担い手の減ったこの国の祭りは、継承が難しくなった。口承以外の記録もなく、私はそれをまとめて覚える役目を命じられた。
祭は不思議だ。ヒトが見出した「神」を、ヒト自ら崇め、畏れる。恋い焦がれ、神が降りてくるのを待つ。
私はそれを繰り返し見てきた。何十年、何百年と。
そう。私はこの国の記録用電子頭脳だ。
やがて、国は滅びた。
崇めるヒトのいなくなったこの国の神は今、何を思うのだろうか。
もう誰も行わない祭を、私は覚えている。あの祭のために奏でる音楽も、色鮮やかな供物の数々も。
空を見上げる。
ああそうか、私も、神が降りてくるのを待っているのだ。
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