300字の世界【SF】

荒城美鉾

お題【海】 そしてクジラの夢を見る

「井の中の蛙大海を知らず」という言葉を教えてくれたのは、僕を恐れない、小さな人間の女の子だった。

 大きさゆえに恐れられ、この狭い水たまりで一人ぼっちだと言うのなら、あなたはここを出て海を目指せば良い。きっとそこには友達がいる、と。

 それを聞いたカニが嗤った。ここが海なのに、と。

 だから僕は、もっと広い海を、宇宙を目指すことにした。


 これが、宇宙クジラの始まりのお話さ、とおばあちゃんは言った。

「さぁお話はおしまい。眠る時間だよ」

 地球の海を知らない私は、窓の外に広がる星の海を見た。

「クジラは友達に会えたかしら?」

 つぶやくと同時に、眠りが瞼に降りてきた。

 波の音が、聞こえた気がした。

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