5人組が通ります

小野瀬うに

仲良し5人組

1冊目 彼氏の必要性

「彼氏欲しいって思ったことある?」


 甘さ控えめのパンケーキを口に運んでそう尋ねれば何かを合図にしたわけでもなく口が開かれる。


「必要性がない」

「彼氏はコスパ悪い」

「彼氏はいらないけどセックスの相手が欲しい」

「1人いたら充分だからな〜」

「う〜ん、最後以外本当にゴミ……」


 金曜20時の池袋東口。いつも通りファミレスに集合した私たち5人組は上から順に小学校からの幼馴染、短大の同期、高校の同級生、保育園からの幼馴染。

 私の紹介と趣味を通じて知り合った仲良し5人組だ。


「そういうひなはどうなのさ」

「彼氏はいらない」

「からの??」

「彼女は欲しい」


 そう、この流れもお決まりなので4人は知ってると笑い飛ばしてくれる。

 私はいわゆるレズビアン……寄りのバイ・セクシャルだ。正直同性である女の方に欲情するけど男性経験もまあそれなりに。

 多様性を受け入れる社会になってきた現代日本ではあるが一応、私は普段は隠している。然しこの4人には言ってもいいかと思い打ち明けてあり……まあこの話は長くなるのでまた後日。

 そんな私ことかのう 春陽ひなた、名前の通りに春生まれの23歳。中小雑貨店の事務員をしている。


「ていうか、どうしてそういう話になったわけ?」

「分かった、紹介してくれた人らの結婚式でしょ」

「正解、社内がお祝いムードなんだよね〜」


 ここで説明しよう。上から順に、高校時代の同級生の伊藤いとう 瑞希みずき。セフレは欲しい発言の女で職業は美容師。

 もう1人は小学校からの幼馴染、逢坂おうさか あかね、昔はあっちゃんと呼んでいたが今はもっぱら苗字で呼ぶ。彼氏の必要性がない……というか彼女の場合はもっと面倒な事情があり男嫌いになってしまった。ちなみに職業はウェディングプランナー。


「あーね。それで本日の議題か」

「いいなあ、結婚式。私も早く結婚したいな〜」


 そして彼女が短大の同期、宮内みやうち 舞衣まい。大手出版社のファッション雑誌編集者だ。彼氏に対してと使うセンスも中々だと思うが、うちの雑貨も定期的に紹介してくれるので助かっている。

 最後に保育園から一緒、もう20年の付き合いになる田原たはら 彩音あやね。職業はバスガイドで中学時代の同級生と付き合って別れてを繰り返している。


「彼氏っつか財布は欲しい〜」

「パパ活かな?」

「こら」

「彼氏は居ないけど推しがいるから人生楽しいもんなあ」

「彼氏いても推しがいる方が人生豊かだよ」


 わかる〜。の声が揃う。

そう、私たちの共通点はいわゆる"オタク"だ。

アニメ、漫画、ゲーム、俳優、アイドル、声優等のいわゆるサブカルチャーを通じたオタク友達でかれこれもう5年目の付き合いになろうとしている。

 なんだかんだこの先も付き合いが続くんだろうとこうして集まる度に思うのだ。


「てか春陽あれ読んだ?先生とお仕置きシリーズ」

「彩音さん、アレまじで良きだった。木内先生と白瀬くんが大変えっち」

「まってまってお仕置きって何その話詳しく聞かせてもらおうか」

「まいまいも読む?春陽のそんまま貸していいよ」

「読みま〜す!」


 ……言い忘れたが腐女子ふじょし、いわゆるBLを嗜む層でもある。

とはいえBLを嗜むのは茜以外であり、私含めた4人もめちゃくちゃのめり込んでいるという訳では無い。ただ、推しCPは存在するし同人誌以外の商業BLにもちゃっかり手を出しているだけである。


「そうだ、茜今うち冷蔵庫何あるっけ?」

「米はある。あとカレー作れそうな材料かな」

「ウイスキーと鏡月もあるよ!」

「まいまいそれ酒だわ。飯じゃないわ」

「あ〜、あやも家帰る前に買い物しなきゃ」

「同居組は大変だねー、絶対人と住めんもん」


 瑞希と茜と舞衣は3人でシェアハウス、彩音は彼氏と同棲、私は1人暮らし。

あっという間に時間が過ぎて瑞希と彩音が仕事なのもあり今日は22時前後にお開きとなった。

 シェアハウス組は練馬に、彩音は三鷹に、そして私は板橋へと帰宅するのだ。


「ただいまあ」


 と言っても誰も返事はしてくれない。

 一人暮らしも早4年、駅徒歩7分、2DK。


「あー……彼氏ほしー……」


 但し彼女でも可。一人が寂しいお年頃の女なのだ。


 この話は叶 春陽、伊藤 瑞希、逢坂 茜、宮内 舞衣、田原 彩音。23歳、独身女5人組の日常だったり非日常だったりする。のかもしれない。

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