始発の彼女2





「ねぇ。もうすぐ、夜が明けるよ。」


そういえば僕は、駅にいたんだと思い出す。


「……。」


僕は無言になってしまう。


「ねぇ。どうする?これから。」


彼女はさっきとは違い、少し突き放した言い方をした。

それからふわりと立ち上がり、


「駅のホームが境界線。

線路には……悪魔が住んでる。」


ふと彼女の顔を見る。彼女は引かれているレールを見て、にこりと笑う。


「決めるのは、君だよ。あっちを選べば悪魔が私たちを連れて行ってくれる。

こっちを選べば、いつもと変わらない朝が待ってる。」


だんだん、ゆっくりと日が昇っていく。

淡く、優しい光に包まれて僕らは朝と自覚する。


『もうすぐ電車が参ります。』


アナウンスが駅のホームに響き渡る。


「どうするの?これから先ずっと、苦しくて辛い毎日を送るの?」


もうすぐそこまで電車は来ている。

眉をひそめて、彼女は続ける。


「今日はもしかしたら昨日よりもいい日なんかじゃないのかもしれないよ?」


「僕はっ……!!!」


言った瞬間、電車はもう僕たちのいる位置まで来ていた

彼女はこちらを向いていて、両手を広げて、電車にぶつかるように飛び込んだ!


彼女は、さっきと変わらず笑っていた。

スローモーションみたいに、彼女の姿が消えていく。

彼女は制服を着ていたんだと今更気づいた。





電車は駅でしっかりと、何事も無く止まっていた。


僕は黙ったまま、駅を出て、家に帰った。

今日もまた、変わらない朝だ。














「もう、来ないでね。」

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