第八話 ウイルスは微生物
「結論から言ってしまおう。ウイルスとは、微生物の一種だ。まあ病原体の一種だと思ってくれたらいい」
病原体。
なるほど、だから『医療系の知識のある者を募集』だったのですね!
そう理解すると同時に、少し「あれ?」と不思議に思いました。そんな病原体である『ウイルス』を、ポーションとして販売しているのでしょうか? それって危険なのでは?
……もしかすると「毒も使い方次第では薬になる」みたいな話でしょうか。
あるいは、私がポーションと言われて回復薬を思い浮かべていたのが、そもそもの間違いであって……。このお店で売っているポーションは、他人やモンスターに危害を与えることが主目的の毒薬なのでしょうか。
勝手に私が想像している間にも、マドック先生の話は続いています。
「ただし普通の病原体とは違って、ウイルスは、回復魔法の影響を受けない」
その言葉に違和感があって、
「……回復魔法の影響を受けない?」
オウム返しに、言葉に出してしまいました。そして、自分の口から出た声を耳にすることで、ようやく頭に意味が浸透して……。
「えっ!」
驚いた私は、自分でも思ってもみなかったほどに、大声を上げていました。
魔法学院で回復魔法を学んだ時に、聞き飽きるほど聞かされた話があります。
「体力の回復や、怪我の修復ならば、何も気にせずに回復魔法を使って構いません。しかし、病気の治療の際には、注意してください。回復魔法は、病人の症状を回復させるだけでなく、体内の病原体まで元気にしてしまいます!」
この話を初めて聞いた時、私は衝撃を受けました。
だって私は『回復魔法を活かした医療士』になりたかったのですから。
でも回復魔法により病原体まで活性化するというのであれば、回復魔法は医療行為には使えそうもありません。
同時に「あれ? でも病気で医療機関にお世話になった時には、回復魔法を受けたような気が……?」という疑問も、頭に浮かびました。
その点も、魔法学院の教師は、ちゃんと教えてくれました。
「だから、回復魔法で病気を治そうと思ったら……。まずは解毒魔法で、体内の病原体を除去してください。これが出来ない魔法使いに、治療は任せられません」
この話があったからこそ。
私は解毒魔法も、回復魔法と同じくらい、何度も何度も練習したのでした。
今、私の目の前で。
「お嬢ちゃん、やっぱりビックリしたようだな。衝撃の真実を聞いた、って顔になってる」
マドック先生は、まるでイタズラが成功した子供のように、ニヤニヤ笑いを浮かべています。
「どうせ魔法学院では『回復魔法は病原体も一緒に回復させる!』って教えてるんだろうし……」
「はい、そうです。そう教わりました」
すかさず私が反応すると。
マドック先生は、私に質問をぶつけてきました。
「じゃあ、お嬢ちゃん。逆に聞くが……。なぜ回復魔法は、病原体も回復させちまうんだい?」
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