第46話 災いを封印する。その15

「ねえねえ、ペリー。」

「なに? ちいちゃん。」

「私たち! 災いを封印! 少年少女剣客隊! 災い14体を封印成功!」

「おめでとう!」

「ありがとう!」

「前回、残した課題が、神の使徒と主人公の関連性ね。」

「その前に、冒頭シーンが思いついたわ。退屈な神が12人の神の使い、神の使徒を地上に使わせようとする。その時、神は12の使徒に、一つだけアビリティーを与えた。そして地上に送り込んだ。」

「こうするとゲーム化なんかでも、初期能力見たいな感じで良い。」

「正確には、そのアビリティーを食べた。そのアビリティーを持った人間を食べた。天界にいる人間の魂を食べた。といった方がリアリティーがあるかな。」

「で、話を戻すと、主人公は、赤ん坊として地上に命を得るのか、それとも成人として地上に送り込まれるのか、ここも問題よね。」

「愛が生まれれば、人を食うのをやめるわよね。」

「人間の味方になる。」

「主人公が死んだ。天界で神が使徒に食わせた。音痴だった。」

「なにか、点が線にならないわね。」

「まだまだ抽象的で、具体性が足らないのよ。」

「主人公を掘り下げるか?」

「まず音痴な主人公、カッコ名前を七月文月。おっと、それは現世での名前だから、異世界ネームは、ジュライと。」

「ジュライは、小さな頃から音痴で残念な子でした。ある時、神の送りつけた使徒に食べられます。するとどうでしょう。使徒は音痴になりました。」

「使徒に人格はあるのか? それともジュライが逆に使徒を食うのか? それとも共存するのか?」

「人間を滅ぼす!」

「人間を守る!」

「ここで心の葛藤が生まれるという展開ね。」

「ここで、また問題が。せっかく決めたキャラクターネーム。これが神のコードネームでしかなくなっている。その他に人間に、また名前が必要だわ。」

「仮に主人公をキャサリンとした場合、神の使徒ジュライにキャサリンが食われる。で、音痴を聞いて、キャサリンの家族が「キャサリン! この音痴はキャサリンよ!」と気づく。」

「なんか、キャサリンという名前が可愛くない。」

「やめてよ!? 今まで適当に決めてきたのに、名前に戻ったら頓挫しちゃう!?」

「一層のこと頓挫するくらいなら、主役は、シャアで敵はアムロにしちゃおう。」

「桜先生!?」

 子供たちが騒いでいると、桜先生が教室にやって来た。

「名探偵コナンでも、池田秀一と安室トオルが出てるぐらいだから問題ないよね。」

「コナンは下火だけど、ガンダムファンがコナンを支えているのは事実。そこからの安室トオル人気にしとこう。」

「テレビで放送される作品の方がパクリとコラボばかりだから、素人が気にしなくていいよね。」

「本当に何かの名前を抜粋して、そのまま使うだけでよいって楽よね。」

「ベジタブルはベジータ。冷蔵庫はフリーザ。レイアースは車の名前。」

「考えるのやめた! キャラの名前は、巨匠方を見習って、適当にしよう。思考が止まるのがもったいない。」

「それでこそ、我が生徒だ。みなさん、さようなら。」

「桜先生、さようなら。」

 子供たちは寺子屋から帰って行った。


「発表! 主人公の名前は、アップル!」

「成功したらアップルからアイフォーンが送られてくるわよ。」

「やったー! 10万円! ウラララ-!」

「じゃあ、神の使徒ジュライと主人公アップルはどうして出会うのか?」

「最初の名シーンね。」

「なんらかで、神の使徒ジュライが現れる。家族か友達をかばって、アップルはジュライに食べられる。」

「音痴な少女アップルがいました。みんなからダメっ子とバカにされていました。ある日、神の使徒ジュライが現れる。家族か友達に見捨てられ、生贄にされて、アップルはジュライに食べられる。」

「こうやって、何回も何回も肉付けをしていくのね。面倒臭い。」

「創作だ! ウラララ-!」

「楓に言われたら頑張るしかないわね。」

「負けられない戦いがここにあるってやつね。」

「その前を考えた方がいいわね。」

「「退屈だ。」ある日、神様が言いました。神は争いばかり続ける人間たちを滅ぼすことに決めました。そして12人の神の使徒を地上に派遣した。」

「オープニングのキャッチコピーもできたわね。」

「まとめにコピ貼りして来るのも大変だわ。」

「でも毎回10万字を読む訳にもいかないもんね。」

「そうそう。まとめておけば1万字で済むもんね。」

「で、食べられたアップル。神の使徒ジュライが歌を歌うと、人が死ぬ。敵を倒す。壁が壊れる。城が崩れる。家族や友達は、神の使徒ジュライの歌声を聞いて、死んだアップルを思い出す。」

「まずまずの展開ね。」

「あと食べられたアップルとジュライのやり取りも必要よね。」

「おまえを見捨てた人間だぞ。」

「私は捨てられた。」

「おまえを生贄にして助かった者たちが、おまえの家族か? おまえの友達なのか?」

「私を見殺しにした家族、友達。」

「人間は世界を破壊している。この世界から人間は排除しなければいけない。これが神のお言葉だ。」

「殺そう。人間を。皆殺しにしよう。私を見捨てた家族や友達は、私の家族や友達じゃない!」

「その通りだ。よく言った。」

「みんな、みんな、死ねばいいんだ。みんな! 死んでしまえばいいんだ!」

アップルは音痴な歌声を響かせる。

「どう?」

「なかなか破滅的で現代人にはちょうど合っているんじゃないか?」

「そうよね。人生が終わった人間しかいないものね。」

「あの、私の出番はどうしましょう?」

「あなたは誰?」

「私は、徳川15将軍の一人、第15代将軍、徳川慶喜ぞよ。」

「ごめん、忙しい。勝手に死ね。」

「そんな!? せっかく15人の災いを封印して、これからなのに!?」

「無理。構想を練るって、簡単に進まないんだもの。」

「そんな!?」

「ウラララ-!」

 こうして徳川15将軍は、全員が封印された。

 つづく。

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