第21話 15の災い。その5

「ねえねえ、ペリー。」

「なに? ちいちゃん。」

「最近、カラスの糞がよく道端に落ちていると思わない?」

「そうね。生理現象だからしょうがないわね。」

「もしかして、15の災いの1つだったりして。」

「徳川15将軍が、そんな恥ずかしいだろう。」

「おまえたち! ご先祖様をバカにするな! 神隠し、大虐殺、巨人、ゾンビと災いを起こしてきた、僕のご先祖様たちが、カラスの糞を降らせるなど、するはずがない!」

「でも徳川家の末裔が家々でしょ? カラスの糞を降らしてもおかしくない。」

「そうそう。それに空からカラスの糞が振ってくるって、かなりの恐怖よ。」

「想像しただけで、公園でおにぎりが食べれない。」

「楓ちゃんの食欲を減退させるとは!? 恐るべし!? カラスの糞!?」

「見たか! 徳川15将軍の15の災いは、残酷なものから、ライトなものまであるのだ! これぞ徳川脅威の15の災いだ! ワッハッハー!」

「別にカラスの糞が降って来ても、私の体を透り抜けるから大丈夫。」

「桜先生!?」

「は~い。みんな、席に着いて。」

 子供たちが騒いでいると、桜先生が教室にやって来た。

「最近、空からカラスの糞が降ってくるから気をつけて帰るのよ。みなさん、さようなら。」

「桜先生、さようなら。」

 子供たちは寺子屋から帰って行く。


「いいな。桜先生は。霊体だからカラスの糞に当たらない。」

「ということは、私たちの中では、私、ちい、楓の3人がカラスの糞の危険があるってことね。」

「実朝くんと家々くんは?」

「私も桜先生同様、霊体です。」

「なんて、都合がいいんだ。霊体は。」

「家々は、徳川家の末裔だから、ご先祖様たちが家々に危害を加えるとは思えない。」

「ありがとうございます! ご先祖様! 家々は必ず徳川家を、江戸幕府を再興してみせます! ワッハッハー!」

「殺す!」

「大砲をぶち込む!」

「お腹空いた。」

「霊体ですみません。」

 その時だった。

「カー! カー! カー! カー! カー!」

 カラスの大群が空を飛んでやってくる。

「キター!? カラスの大群!?」

「糞の銃弾爆撃が始まるわよ!?」

「ダメだ!? 隠れる所がない!?」

「カー!」

 カラスの糞が辺り一面に振ってくる絶体絶命のピンチに陥る少年少女剣客隊。

「こうなったら! この手しかない!」

「うわあ!? 何をする!? 離せ!? 離さないとぶっ飛ばすぞ!?」

 ちいとペリーと楓は、家々を持ち上げて自分たちの対空防御の盾とする。

「うわあ!? 糞が!? カラスの糞だ!? ギャアアア!?」

 ベチャ! ベチャ! と糞避けになっている家々の全身に降り注ぐ。

「さすが、ちい。名案だわ。」

「任せてよ。伊達に竜の使いを呼んでないわよ。」

「家々くん、安らかに眠れ。」

「勝手に殺すな!? 生きてるわい!?」

「カラスの中に誰かいるぞ!?」

「私は、徳川15将軍の一人、第12代将軍、徳川家慶であるぞ!」

 カラスに乗って現れたのは、徳川家慶であった。

「カラスの糞将軍だ。」

「汚い。」

「気持ち悪い。」

「最低。」

「ご先祖様の面汚し。」

「好きでカラスの糞を振らしている訳ではないわ! これも15の災いの1つだ。仕事なんだよ! 好きでやってるんじゃない! 仕方がないだろう!」

 やはりカラスの糞は、15の災いの1つであった。

「みんな、一気に勝負をつけるわよ!」

「少年少女剣客隊の名に懸けて!」

「おお!」

「みんな、がんばって!」

 特に攻撃手段がない実朝は、応援専門要員になってしまった。

「いでよ! 海竜様と火竜様の使い! 海ちゃん! 火ちゃん!」

「だから、いきなり呼ぶなよ!? トイレや風呂に入っていたらどうするんだ!?」

「もう少しでキスシーンだったのに!? どうしてくれるんだ!?」

「いいから、早く必殺技で攻撃して。」

「溺れてしまえ! 海竜破!」

「もっと熱くなれ! 火竜破!」

 海竜と火竜が家慶を攻撃する。

「教会の倉庫から持ってきました。対空ミサイル、パック3。発射!」

 ペリーは遠慮なくミサイルの引き金を引いた。ズドーンっとミサイルがカラスに向かって飛んで行く。

「蛍さんたち! 飛んで行け! 楓の蛍ビーム!」

 楓は蛍をカラスに向けて光線のように飛ばして攻撃する。

「なかなかやるな!? 子供のくせに!?」

 カラスの大群と少年少女剣客隊の戦いは、一進一退の攻防を繰り広げる。

「ウギャア!? 撃たれた!? どこからだ!? クソ!? 退却だ!?」

 ズドーンっと、徳川家慶の胸を撃ち抜く銃弾があった。

「カー!」

 カラスたちは逃げ去って行った。

「激しい戦いだった。」

 激戦が終わった少年少女剣客隊はカラスの糞塗れであった。

 つづく。

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